お知らせ
第36回中冨健康科学振興賞に森田 達也氏が選出されました
この度、2025年度(第36回)中冨健康科学振興賞に会員の森田 達也(もりた・たつや)氏が選ばれました。
中冨健康科学振興財団は、1988年2月に厚生大臣の許可を得て設立し、2010年5月に内閣府より変更認定を受けた研究助成型の公益財団法人です。
Webサイト:https://www.nakatomi.or.jp/
中冨健康科学振興賞は、「健康科学の発展に顕著な功績があった研究者」を顕彰する制度です。日本緩和医療学会から森田氏を推薦し、この度、受賞の運びとなりました。
森田氏は、医学部卒業以来三十年以上にわたり、常に緩和ケアの臨床と研究に全力を注いでこられました。特に、がん患者を中心とした緩和困難な苦痛症状に対する鎮静(palliative sedation)の臨床的・倫理的基盤の確立においては、世界を代表する研究者として高く評価されています。
2002年に苦痛緩和のための鎮静の操作的定義を提示し、2004年には心理的・実存的苦痛に対する鎮静の意義を報告、さらに2005年には多施設前向き研究により鎮静の有効性と安全性を検証されました。これらの研究は、今日に至るまで国際的に参照され、臨床実践の拠り所となっています。また、森田氏は、日本緩和医療学会による「苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン」の策定と改訂を一貫して主導され、適応や手順、説明と記録のあり方を標準化し、臨床の質と倫理的透明性を大きく高められました。近年は「持続的深い鎮静(continuous deep sedation)」に関する概念整理を提唱し、日本発の知見を国際的議論の深化につなげておられます。
さらに、森田氏は複数の多施設共同研究や国際共同研究を企画・主導し、完遂してこられました。これらの活動を通じて、わが国における緩和医療研究の基盤形成に多大な貢献を果たしてこられたことは特筆すべき点です。こうした継続的な努力により、日本発の緩和ケア研究が世界水準に位置づけられ、国際的ネットワークの中でも確かな存在感を示すようになりました。その研究成果は数値にも裏付けられております。これまでに発表された原著論文は第1著者として100編、共著を含めると500編を超えており、わが国の緩和ケア領域における最も豊かな学術的蓄積の一つを築いてこられました。研究の質と量の両面における卓越した成果は、後進の学術活動にとっても大きな指標となっています。
また、終末期のせん妄、呼吸困難、難治性疼痛などに対する体系的治療アルゴリズムの構築、厚生労働科学研究による実装研究の推進、教育書・実践書の執筆を通じ、全国の現場に確かな実践知を還元してこられました。さらに京都大学医学部臨床教授として多くの若手医師を育成し、研究者コミュニティの国際連携を推進する役割も果たしてこられました。
森田氏の座右の銘「一隅を照らす」は、患者と家族に誠実に向き合いながら、その歩みを学術と教育へと昇華させ、広く社会に還元する姿勢を象徴しています。臨床と研究、教育と社会的貢献のすべてにわたり、氏の活動は緩和ケアの発展に大きく寄与されました。



