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学会概要
理事長挨拶
 2018年6月より日本緩和医療学会の理事長を拝命することとなりました。わが国は未曾有の高齢化、多死社会を迎えつつあり、今までの疾病の治療と予防、機能の維持向上を目的とした医療・ケアに加えて、「質の高いエンド・オブ・ライフ」をどう過ごすことができるか、に力を入れる必要が出てきています。その中で日本緩和医療学会はどのような役割を果たしていくことができるでしょうか?
私は、
1)適切なタイミングで必要な人に緩和ケアを行うことができること、
2)わが国の専門緩和ケアの質の評価・維持・向上に取り組むこと、
3)症状緩和、QOL/QODの向上に資する研究活動を推進すること
の3点を軸にして学会の活動を実践し、この難局に対応していきたいと考えています。具体的には以下のような課題が挙げられます。

1)適切なタイミングで必要な人に緩和ケアを行うことができること
 @いわゆる緩和ケアと専門診療の統合(インテグレーション)といわれる概念で、早期からの緩和ケアや緩和ケアのスクリーニングと連動した専門緩和ケアの介入などがその代表としてあげられます。
 A疾患を問わずに緩和ケアを提供できること、は大きな課題です。心不全、COPD、神経筋疾患、認知症に対する緩和ケアという捉え方もできますが、一方でaging、aged careにどう取り組むかと言う視点も重要です。この観点から考えると、他国の緩和ケアがFamily medicineに立脚して発展した点には学ぶ点が大きいかもしれません。
 B主治医やプライマリーナースが実践する基本的緩和ケアと専門的緩和ケアをどのように提供するかというサービス提供モデルを考えることも重要です。合わせて、がん以外の疾患や状態に対する基本的緩和ケアを充実させていく必要があります。

2)わが国の専門緩和ケアの質の評価・維持・向上に取り組むこと
 @わが国の専門ケアサービスが、どのような患者の、どのような苦痛や苦悩に対して、どのようなアプローチをして、その効果はどうだったか、に関する調査を、統一された評価方法(ものさし)を使って専門的緩和ケアを実践する施設において定期的に行い、専門緩和ケアの質の評価、維持、向上(いわゆるオーディット)をしていきたいと考えています。これによって、日本の専門的緩和ケアがその全体として何をしているかの概要を掴むことができます。また、難治性の症状や状態を同定することにより、取り組むことが必要な研究課題を明らかにすることが可能になります。
 A上記の専門的緩和ケアの質の向上のためには緩和医療専門医をはじめとする専門家の育成の推進、専門教育体制の整備を更に進めていく必要があります。

3)症状緩和、QOL/QODの向上に資する研究活動を推進すること
 @学会として取り組むべき必要がある研究課題を、2)で述べたオーディットなどをもとに定め、QOL/QODの向上に資する研究を支援できる体制を学会として整備していくこと
 A学術大会を更に充実させることで、国内外の第一線の研究者と情報交換できる機会をもち研究と臨床を向上させること

 これらの活動を確実に実践していくために、まずは理事・代議員を中心に学会が目指す緩和ケアについて話し合いの場をもって、これからの行動計画を策定し、その計画の進捗状況を学会員に公表します。学会員が共通の理念と目標を持って緩和ケアの臨床・研究・教育にあたり、目標達成に向け誠心誠意努力したいと考えています。皆様の御協力、御指導を何卒よろしくお願い申し上げます。

神戸大学大学院医学研究科
神戸大学医学部附属病院緩和支持治療科
木澤 義之

掲載日:平成30年7月24日
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