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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.93
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2021  93
Journal Club
がん患者の摂食能力低下による心理社会的影響に関する情報と支援についての経験:
定性的インタビュー研究
兵庫県立大学 看護学部 実践基礎看護講座治療看護学
脇口 優希

Nora Lize, Vera IJmker-Hemink, Rianne van Lieshout, Yvonne Wijnholds-Roeters, Manon van den Berg, Maggy Youssef-El Soud, Sandra Beijer, Natasja Raijmakers
Experiences of patients with cancer with information and support for psychosocial consequences of reduced ability to eat: a qualitative interview study
Support Care Cancer. 2021 Apr 21. PMID: 33880638 DOI: 10.1007/s00520-021-06217-6


【目的】
 がん患者は、腫瘍や治療の影響で摂食能力が低下することによって、怒りや悲しみなどの感情を抱く。この感情は、食べることへの葛藤、葛藤を他の人から誤解されること、社会活動における喜びの減少によって引き起こされる。先行研究によると、摂食能力の低下がもたらす心理社会的影響に関する情報や支援が不足している可能性が指摘されている。本研究の目的は、このような患者の情報と支援の経験について質的に調査し明らかにすることである。
【方法】
 摂食能力低下による心理社会的影響を経験したがん患者24名(頭頚部がん9名、悪性リンパ腫9名、肺がん6名)を対象に半構造化面接を実施した。録音データから逐語録を作成し、コード化と新たなテーマの分析には記述的現象学的アプローチを用いた。
【結果】
 医療者からの情報や支援については1)複合的な評価・2)個別的ケアという2つのテーマが、非公式な支援については3)理解されること・4)実用的な支援という2つのテーマが抽出された。患者らは、摂食能力の低下がもたらす心理社会的な影響に関する情報や支援を受ける際に、複合的な評価と個別的なケアが提供されると肯定的な経験をしたと述べていた。一方、医療者が専門的な視点のみで評価したり、食事摂取量だけに着目したりする場合には否定的な経験をしたと述べた。摂食能力の低下に対する非公式な支援は、非公式なケア提供者が患者の状況を理解しようとした場合、肯定的に捉えられていた。非公式な実用的支援についての評価は患者によって様々であり、有用なこともあれば迷惑なこともあった。
【結論】
 摂食能力の低下によって心理社会的にも影響を受ける患者は、専門的支援と非公式支援の両方を必要としている。また、医療者が心理社会的影響について関心を寄せることは、非公式なケア提供者が患者の状況に理解を示すことと同様に重要である。
【コメント】
 がん患者の摂食に関する研究は、症状管理、栄養障害や悪液質などが主なテーマであった。本研究は摂食能力低下による心理社会的影響をふまえ、提供されたケアをどう捉えたか当事者目線で明らかにしており新たな視点を提供した。医療者が心理社会的影響を認識し関心を寄せることは肯定的に捉えられていたが、摂食能力回復への貢献は明らかでない。今後栄養管理と心理社会的ケアの複合により摂食能力が回復するか検証する必要がある。

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