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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.93
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2021  93
Journal Club
すべてのがん患者は疲労を感じるか?
乳がん患者の倦怠感の軌跡に関する縦断的研究
岩手県立大学 看護学部
東北大学大学院 医学系研究科 博士後期課程
細川 舞

Julienne E Bower, Patricia A Ganz, Michael R Irwin, Steve W Cole, Deborah Garet, Laura Petersen, Arash Asher, Sara A Hurvitz, Catherine M Crespi
Do all patients with cancer experience fatigue? A longitudinal study of fatigue trajectories in women with breast cancer
Cancer. 2021 Apr 15;127(8):1334-1344. PMID: 33606273 DOI: 10.1002/cncr.33327


【目的】
 倦怠感はがん治療において一般的であり予測される副作用である。しかしこれまでの研究は倦怠感のレベルに焦点を当てたものが多く、時間経過に伴う倦怠感の強さや変化が明確にされていなかった。本研究では早期乳がん患者を対象として、診断からサバイバーシップまでの倦怠感の軌跡を縦断的に明らかにすることを目的とした。
【方法】
 術前・術後の補助化学療法、補助放射線療法、内分泌療法を行っていないstage 0〜VAの乳がん患者を対象に、ベースライン(治療前)、治療終了時(化学療法または放射線療法を受けた患者のみ)、治療後6カ月、12カ月、18カ月に調査を行った。倦怠感の評価には、Multidimensional Fatigue Symptom Inventory-Short Form(MFSI-SF)の下位尺度General Fatigueで評価した。
【結果】
 244名の対象者が最終調査(治療後18カ月)に回答し、継続率は90%であった。倦怠感の軌跡は、5つの潜在的なパターン:「低め安定」(66%)、「増加(初期の倦怠感が低く時間とともに増加)」(9%)、「反応性(倦怠感が増加した後に減少)」(8%)、「減少(初期の倦怠感が高く時間とともに減少)」(4%)、「高め安定」(13%)に分類された。「反応性」群の特徴として、約90%が放射線治療を受けていた。また、ベースラインの抑うつが「低め安定」群と「増加」群と比較し高いレベルの抑うつ症状を呈していた(vs.「低め安定」:p<0.0001、vs.「増加」:p=0.002)
【結論】
 がんに関連した倦怠感は、一般的にはがん治療に対する普遍的な反応であるが、本研究では倦怠感は個々の患者で大きく変化することが強く示唆された。倦怠感が持続する確率は、うつ病の既往や、抑うつ、睡眠障害などの症状が強いほど高くなる。しかしこれらの症状は介入可能なため、適切な症状緩和の治療に結び付けることで倦怠感やそれに伴う行動障害を改善できる可能性が示唆された。
【コメント】
 倦怠感は疼痛と同様の主観的な症状であるため、第三者は理解しにくく「治療をしているから当たり前…」と患者自身も症状を放置しやすい。Bowerらのこの研究では、乳がん患者の長期的な倦怠感の推移を明らかにした意義あるものであった。治療後18カ月経過した後も強い倦怠感を感じている患者も多く、倦怠感軽減の介入を行うことが課題であるが、エクササイズなど倦怠感に効果的と言われている介入も積極的に導入されているとは言えない。さらに倦怠感増強の要因となりうる抑うつ、不眠に対する積極的な介入を行うことも課題である。

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