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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.93
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2021  93
Journal Club
悪性腸閉塞を有する進行がん患者の生存率に対する非経口栄養・水分補給の効果:
多施設共同前向きコホート研究の二次解析
国際医療福祉大学病院 薬剤部
佐藤 淳也

Sayaka Arakawa, Koji Amano, Shunsuke Oyamada, Isseki Maeda, Hiroto Ishiki, Tomofumi Miura, Yutaka Hatano, Akemi Shirado Naito, Mamiko Sato, Tetsuya Ito, Kazuhiro Kosugi, Satoshi Miyake, Tatsuya Morita, Masanori Mori, East-Asian Collaborative Cross-Cultural Study To Elucidate the Dying Process (EASED) Investigators
Effects of parenteral nutrition and hydration on survival in advanced cancer patients with malignant bowel obstruction: secondary analysis of a multicenter prospective cohort study
Support Care Cancer. 2021 Jun 10. PMID: 34114097 DOI: 10.1007/s00520-021-06293-8


【目的】
 進行がん患者の悪液質を管理するために、非経口栄養・水分補給(PNH)をルーチンに使用しないことが推奨されている。これには、PNHが経腸栄養(EN)と異なり、生活の質(QOL)や生存率を改善しないためとされている。しかし、終末期がん患者のうち、悪性腸閉塞(MBO:Malignant bowel obstruction)を有する患者では、ENの投与が限られるなかで選択されるPNHの有用性は不明な点が多い。そこで、MBO患者の生存率に対するPNHの影響を評価した。
【方法】
 本研究は、2017年1月から2018年6月にかけて、全国の23の緩和ケア病棟において、進行がん悪液質患者の生存率に対するPNHの影響を調べるために実施した前向きコホート研究の二次解析である。緩和ケア病棟に入院した患者のうち、MBOを有する患者の最初の1週間の非経口経路によるカロリー充足率/総摂取カロリーから4グループに分類した(≧75% or≧750kcal/日、50-75% or 500-750kcal/日、25-50% or 250-500kcal/日、<25% or <250kcal/日)。このうち、PNH高値群(25%以上または250kcal/日以上)とPNH低値群(25%未満または250kcal/日未満)の2群における生存期間を解析した。
【結果】
 期間中の対象者1,896名のうち、257名(13.6%)がMBOを有した。データが不足する患者や主な栄養投与経路が経腸栄養の患者を除外し、PNH高値群(n=68)とPNH低値群(n=76)が解析対象に該当した。生存期間の中央値は、それぞれ35.5日[95% CI :27-44]、17.5日[13-21]であり、PNH高値群の生存率は、PNH低値群に比べ有意に長かった(log-rank p<0.001)。Coxの比例ハザードモデルにおいて、PNH高値群ではPNH低値群に比べて死亡リスクが有意に低いことが確認された(HR=0.55 [0.36-0.83], p=0.005)。
【結論】
 緩和ケア病棟に入院しているMBOを有する進行がん患者に対するPNHの適用は、生存期間を延ばすために有益である可能性がある。
【コメント】
 通常、予後が短いと推定される終末期がん患者の輸液は、投与量やカロリーとも極力減らす臨床選択を散見する。これには、過剰な輸液が続発する浮腫や喀痰の増加になると懸念する医療者が多いことにもよる。論文内の考察では、ホスピス入院患者が死を覚悟し、飲食を止めることを選択した場合の予後は7-15日以内であったと引用報告している。これを踏まえると、本調査でHPN(高値)を投与した患者の予後は36日であったことから、MBOを発症した進行がん患者へのPNHが有益な可能性が示唆される。今回、PNH高値群は、アミノ酸、ブドウ糖、電解質、および可能であれば脂肪乳剤を含む溶液であるが、PNH低値群の組成は、ブドウ糖と電解質または生理食塩水を含む溶液のみである。今回の対象患者は、血清アルブミン濃度の平均値が2.5g/dL、1カ月間の体重減少が83%であったことから、大半は重度の栄養失調を伴う難治性悪液質の段階にあったと考えられる。アミノ酸を含む栄養供給が悪液質による飢餓の進行を制御したのかは興味のあるところであるが、PNH高値群の組成やカロリーに関する詳細は不明である。また、HPN投与によるQOLや副作用は検証していない点は注意が必要である。

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