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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.93
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2021  93
Journal Club
進行がん患者に対する緩和ケア・パスの有効性に関する介入研究
名古屋大学大学院 医学系研究科 総合保健学専攻 高度実践看護開発学講座
佐藤 一樹

Annemieke van der Padt-Pruijsten, Maria B L Leys, Esther Oomen-de Hoop, Agnes van der Heide, Carin C D van der Rijt
Effects of Implementation of a Standardized Palliative Care Pathway for Patients with Advanced Cancer in a Hospital: A Prospective Pre- and Postintervention Study
J Pain Symptom Manage. 2021 Sep;62(3):451-459. PMID: 33561492 DOI: 10.1016/j.jpainsymman. 2021. 02.003. Epub 2021 Feb 7.


【目的】
 進行がん患者に対する緩和ケア・パス導入による死亡場所や終末期の話し合いへの効果を検証した。
【方法】
 オランダの1教育病院の入院と外来で介入前を対照群とする前後比較研究を行った。対象者は対象施設の入院・外来を受診した成人がん患者で、2014年2月〜2015年2月の死亡者を対照群、2015年11月〜2016年11月の死亡者を介入群とした。介入は緩和ケア・パスの導入であった。緩和ケア・パスの開始は、1)予後1年以内のサプライズ・クエスチョン、2)有効ながん治療の選択肢がない、3)全身状態の悪化、4)重篤な有害事象、5)患者の治療中止の希望で判断される。緩和ケア・パスの適格となった場合、医師は電子カルテのリンクから緩和ケア・パスを表示し、緩和ケアのチェックリストとケア・ガイドを参照できる。また、他職種にコンサルテーションを依頼するボタンもある。すべての医療者は電子カルテのトップページのリンクからチェックリストを閲覧でき、患者のニードが達成されているか縦断的に把握できる。ケア・ガイドは、1)サプライズ・クエスチョンでの予後予測、2)終末期の話し合いのニード、3)身体・心理的ケア・ニード、4)話し合いのカルテ記録、5)話し合いに家族を含める、6)かかりつけ医などと連携したケアを含む。すべての医師と看護師は緩和ケア・パスの30分程度の研修を受け、サプライズ・クエスチョンは進行がん診断時に全患者に対しアセスメントした。
 介入の評価項目は、1)終末期の話し合いのカルテ記載、2)希望した死亡場所の達成、3)DNAR指示のカルテ記載、4)死亡前3カ月間での入院、5)死亡前3カ月間でのかかりつけ医との話し合いのカルテ記載とした。
【結果】
 対照群424名、介入群426名が対象となった。介入アドヒアランスは、緩和ケア・パスの導入は55%(236名)で、中央値で死亡前33日の開始であった。外来での導入は53%(125名)で死亡51日前の開始、入院での導入は47%(111名)で死亡16日前の開始であった。
 介入群は対照群と比較して、終末期の話し合いのカルテ記録(75%→62%, p<0.001)や死亡場所の希望の記録(47%→32%, p<0.001)は減少したが、DNAR指示の記載(79%→89%, p<0.001)は増加し、死亡前3カ月間の入院(68%→69%, p=0.625)や病院外での死亡(74%→77%, p=0.360)は有意に変化しなかった。かかりつけ医との話し合いの記録は死亡場所の情報共有のみ増加した(79%→95%, p=0.001)が、そのほかの健康状態に関する記録は増加しなかった。
【結論】
 緩和ケア・パスは死亡場所や終末期の話し合いのいくつかの点を改善させなかった。緩和ケア・パスの導入をより早期にできる介入戦略が課題となる。
【コメント】
 進行がん患者に対する早期緩和ケアはその提供方法(臨床での実装化)に課題がある。緩和ケア・パスは緩和ケアの専門家を介さない実行可能性の高い介入方法であるが、弱い介入で介入アドヒアランス(パスの導入割合、開始時期)に課題があり、本研究での効果は限定的であった。緩和ケア・パスをより早期から積極的に活用すれば効果的であったのか、緩和ケア・パスの有効性がそもそも低かったのか、については今後の検証が必要である。

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