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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.91
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2021  91
Journal Club
患者報告型アウトカムと医療者報告型アウトカムの比較:
日本語版IPOSの妥当性の検証
名古屋大学大学院 医学系研究科 総合保健学専攻高度実践看護開発学講座
川島 有沙

Hiroki Sakurai, Mitsunori Miyashita, Tatsuya Morita, Akemi Shirado Naito, Shingo Miyamoto, Hiroyuki Otani, Junko Nozato, Naosuke Yokomichi, Kengo Imai, Ai Oishi, Yoshiyuki Kizawa, Eisuke Matsushima
Comparison between patient-reported and clinician-reported outcomes: Validation of the Japanese version of the Integrated Palliative care Outcome Scale for staff
Palliat Support Care. 2021 Mar 5;1-7. doi: 10.1017/S1478951521000018. PMID: 33666153.


【目的】
 QOLや症状の評価に、患者報告型アウトカム尺度(PROMs:Patient-reported outcome measures)を用いることの重要性が、国際的に高まってきている。患者の自己評価が難しい場合には、医療者報告型アウトカムなどの代理評価尺度を用いることが多い。本研究は、IPOS日本語版スタッフ用尺度の妥当性と信頼性を評価することを目的とする。
【方法】
 日本語版患者用IPOSの妥当性の検証とともに、多施設横断研究を2015年8月から2017年3月に行った。対象施設は6施設(がんセンター、総合病院、地域病院それぞれ2施設)であり、対象者は緩和ケアを受けている日本人の成人がん患者とそのスタッフとした。評価項目は、対象者の背景情報と臨床データ(ECOG-PS、現在の抗がん治療など)、欠損値、治療ニーズの有病率、およびIPOSの総得点とした。基準関連妥当性、評価者内信頼性、評価者間信頼性の分析のために、クラス内相関(ICC)を算出した。
【結果】
 患者版IPOSに143名の患者、スタッフ版IPOSには79名の医療従事者が回答した。スタッフ版IPOSの欠損値で最も多かったのは、「家族の不安」(3.5%)と「気持ちの共有」(3.5%)であった。半数以上の患者が「動作能力の低下」「不安」「家族の不安」で中等度より悪いと評価をし、スタッフは「弱み」「不安」「家族の不安」で中等度以上に悪いと評価をしていた。基準関連妥当性(患者の評価とスタッフの評価の値の相関)、ならびに評価者内信頼性および評価者間信頼性について、ICCはそれぞれ、0.114(感情の共有)〜0.826(嘔気)、0.720(不安)〜0.933(嘔気)、0.038(現実の問題)〜0.830(嘔気)の範囲であった。
【結論】
 スタッフ版IPOSは回答が容易であり、身体的項目については妥当性と信頼性が高い。しかし、精神的・社会的項目についての妥当性は十分でないため、患者版IPOSの使用が患者にとって負担となる場合に使用することが好ましい。スタッフ版IPOSは、自己評価が難しい成人のがん患者のアウトカムを測定するための有用なツールとなる。
【コメント】
 患者報告型アウトカムは正確な患者評価には理想的なツールであるが、症状による苦痛や認知機能障害で自己報告が難しい場合が少なくない。医療者は心理社会的苦痛を低く見積もる可能性があることを念頭に置いた上で、スタッフ版IPOSを使用できることを示したことが、本研究の意義である。

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