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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.91
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2021  91
Journal Club
がんサバイバーに対するオンライン心理療法有用性に関する無作為化比較試験
名古屋大学大学院 医学系研究科 総合保健学専攻
杉村 鮎美

María Lleras de Frutos, Joan Carles Medina, Jaume Vives, Anna Casellas-Grau, Jose Luis Marzo, Josep M Borràs, Cristian Ochoa-Arnedo
Video conference vs face-to-face group psychotherapy for distressed cancer survivors: A randomized controlled trial
Psychooncology. 2020 Dec;29(12):1995-2003. doi: 10.1002/pon.5457. Epub 2020 Aug 7. PMID: 32618395.


【目的】
 PPC(positive psychotherapy for cancer)は、感情表出やコーピングに関するグループセッションを通して自己の成長を促す心理療法で、がんサバイバーの心理社会的問題へ効果が認められている。しかし、対面セッションによる圧迫感や地理的制限などの問題があり、その実践は十分ではない。そこで、本研究はオンラインで行われた心理療法(OPPC: online PPC)とPPCを比較・検証することを目的とする。
【方法】
 ランダム化比較試験は2016年1月から2019年1月にバルセロナのがんネットワークヘルスケアセンターで実施された。がんネットワークに登録された女性がんサバイバー289名のうち、適格基準(18歳以上、一次治療終了、臨床的に安定している、HADS10点以上、インターネット使用可能、スペイン語の読解可能)に該当する269名が対象となり、OPPC群124名、PPC群145名に割り振られた。OPPC群は、90-120分のオンライングループセッション(5-6名/G)を1回/週を11回実施し、12回目は対面で実施した。PPC群は、90-120分のグループセッション(8-12名/G)を1回/週、12回提供された。評価は、不安抑うつ:HADS、外傷後ストレス症状(PTSS):PCL-C、外傷後成長(PTG):PTGI、認知療法の質:CTS-Rを測定した。測定はベースライン(T0)、介入直後(T1)、介入3カ月後(T2)に評価された。
【結果】
 OPPC群99名、PPC群116名が介入を完遂した。T0時点でOPPC群は若年、高学歴、高い就業率を有していたため、その後の解析で調整された。ITT解析を用いたGLMMの結果、OPCC群のHADS(b=-2.24, 95%CI=-3.15〜-1.33)とPTSS(b=-3.25, 95%CI=-4.97〜-1.53)は時間の経過とともに有意に減少し、PTG(b=3.08、95%CI=0.38-5.78)は有意に増加した。また、全ての評価項目において、両群の効果に有意な差は認められず、介入の継続性やフォローアップ中の離脱においても両群に差は認められなかった。
【結論】
 OPPC治療は、治療後早期の女性がんサバイバーにとって対面と同等に効果的である。この結果は、インターネットを利用した心理療法へのアクセスと利用可能性の向上につながると考えられる。
【コメント】
 OPPC群とPPC群の両者において、介入効果だけでなく、離脱率にも差が認められなかったことは、患者の選択肢を広げるとともに、今後の実施可能性を支持する内容であった。一方で、本研究は女性(乳がんが8割)に限定していたこと、対象者が40-50代の若年層に限定されていたことから一般化には課題がある。しかし、昨今のCOVID-19対策下において複雑な心理社会的問題を抱えるがんサバイバーにとって、本研究結果は非常に有意義であるといえる。

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