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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.91
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2021  91
Journal Club
進行がん患者に対するメチルプレドニゾロン投与による睡眠への短期的影響
〜ランダム化プラセボ対照二重盲検試験〜
国際医療福祉大学病院
佐藤 淳也

Gunnhild Jakobsen, Morten Engstrøm, Marianne Jensen Hjermstad, Jan Henrik Rosland, Nina Aass, Eva Albert, Stein Kaasa, Peter Fayers, Pål Klepstad, Ørnulf Paulsen
The short-term impact of methylprednisolone on patient-reported sleep in patients with advanced cancer in a randomized, placebo-controlled, double-blind trial
Support Care Cancer. 2021 Apr;29(4):2047-2055. doi: 10.1007/s00520-020-05693-6. Epub 2020 Aug 27. PMID: 32856209 PMCID: PMC7892512.


【目的】
 進行がん患者には、制吐や倦怠感など終末期の全身状態の改善を目的として副腎皮質ステロイドが使用される。しかし、副腎皮質ステロイドが患者の睡眠に与える影響は、詳細に検証されていない。本研究では、進行がん患者対するメチルプレドニゾロン投与による患者の睡眠の影響をプラセボ対象二重盲検試験にて検討した。
【方法】
 対象は、ノルウェーの5つの緩和ケア提供施設において24時間以内にNRS4以上の疼痛を有する進行がん患者であった。コルチコステロイドの鎮痛効果を評価したランダム化プラセボ対照二重盲検試験における副次的評価として睡眠が評価された。無作為にメチルプレドニゾロン16mg×2回(午前中と午後6時)/日またはプラセボを7日間投与する2群に割り付けられた。EORTC QLQ-C30(回答は、0-100スコア範囲にあり、高スコアはより多くの睡眠障害を表している)およびPittsburgh Sleep Quality Index questionnaire(PSQI;主観的な睡眠の質、睡眠潜時、睡眠時間、正常な睡眠効率、睡眠障害、睡眠薬の適用、日中機能障害の7つのドメインで構成。各ドメインには0-3の回答スコアがあり、スコアが低いほど睡眠の質が良い。回答は、0-21スコア範囲にあり、総合スコアが5以上であれば、睡眠の質が悪い)を用いて、ベースライン時および7日目の睡眠状態を評価した。
【結果】
 50例が無作為に割り付けられ、そのうち25例がメチルプレドニゾロン群、22例がプラセボ群となった。ベースライン時のQLQ-C30睡眠スコアは、メチルプレドニゾロン群で29.0±36.7(平均±標準偏差)、プラセボ群で24.2±27.6であった。7日目のスコアは、それぞれ20.3±32.9および28.8±33.0で、両群間に差はなかった(p=0.173)。ベースライン時の平均PSQIグローバルスコアは、メチルプレドニゾロン群で8.2±4.3、プラセボ群で7.6±3.7であった。ベースライン時、メチルプレドニゾロン群25人中18人(72%)、プラセボ群22人中15人(68%)が睡眠不良者(PSQIグローバルスコア>5)に分類されていた。7日目の時点では、PSQIグローバルスコアは、それぞれ8.52±5.02および8.05±3.66であり、両群で差を認めなかった(p=0.809)。
【結論】
 進行がん患者では、メチルプレドニゾロン16mgを1日2回7日間投与しても、患者の睡眠に影響はなかった。
【コメント】
 進行がん患者は、睡眠障害をかかえる患者が多く、これに全身状態の改善に比較的高用量のステロイドが使用されることが少なくない。臨床家には、ステロイドによる不眠は、昼夜逆転を加速し、せん妄のリスク因子となるという懸念があり、躊躇されることもある。今回の研究では、副腎皮質ステロイドが、患者の睡眠に影響しないというエビデンスが比較的信頼性の高い試験デザインで抽出された。この事実は、ステロイド使用を推進する根拠となろう。ただし、対象患者の約70%がPSQIグローバルスコア>5として、すでに睡眠障害があったこと、今回用いた32mg/日のメチルプレドニゾロンが、緩和領域で使用されるデキサメタゾンやベタメタゾンに外挿できるか(換算すると約6mg程度、またメチルプレドニゾロンは、半減期が比較的短い)、より高用量のステロイドでも患者の睡眠がさらに悪化しないかなどの点はさらに関心のあるところである。

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