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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.90
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2021  90
よもやま話
マインド
〜新型コロナウイルス感染症を通じて〜
滋賀県立総合病院 精神科・緩和ケア科
緩和ケアチーム
認知症ケア・精神科リエゾンチーム
COVID-19罹患者・対応者メンタルヘルスケアチーム
伴 敏信

 滋賀県に来て、約5年が経ちました。
 都道府県がん診療連携拠点病院であり、緩和ケア病棟のある滋賀県立総合病院(旧成人病センター)に在籍しています。当院は精神科の文化のない病院で、これまでの精神科の経験を還元できればなあ、と赴任前に考えていました。
 当方は精神科医なのですが、精神科医としては少しはみ出し者で、身体もある程度診ることのできる精神科医が目標でした。その精神科医療に加え、少々緩和ケア、在宅医療も携わった経験もあったので、総合病院に赴任してもなんとかなる!と前向きでしたが、空回りをする日々を過ごすことになりました。
 赴任前は、新たに精神科文化の風を吹き込み、緩和ケアについてはより専門的に学ぼう、と欲張りなことを思っていたのですが、赴任初日に教えを乞おうと思っていた緩和ケアの先生が長期病休、翌年にはもう一人の精神科医が病で倒れ、赴任当初の予定はすべて白紙となり、ただただ自分のできること、やらなければならないことを必死に行うばかりでした。仕事としては気が付けば緩和ケア関連のものが多くを占めました。
 どっぷりと緩和ケアに入りこむと、これまでできなかった身体症状緩和の熟練度が上がり、また精神症状緩和のスキルも上達しました。患者さん、家族さんから感謝されることも増えました。それでもなお残る苦痛に対しては正解を見いだせないこともしばしばなのです。その苦痛に対して、逃げずに真摯に向き合うこと、共に過ごすことが緩和ケア、ホスピスケアの大切な一つ。そのマインドを持ちながら、悩みながら働いている緩和ケアチームや緩和ケア病棟の看護師、薬剤師や臨床心理士。その彼、彼女たちとともに働き、患者さんについてたくさん話すことで、患者さんや彼女らの考えに触れることで、自分の考えも広がり、自分の考えが変化していきました。
 症状緩和ももちろん大切だけれど、そのひとそのひとの困っていることを一緒に、共有する。解決できないことももちろんあるけれど、つながり続けること。医療よりももっと大切な、ひととひととの絆。その絆こそが自分の中では緩和ケアなのかな…
 よくよく振り返ると、自分が大切にしてきた精神科医療も、そのひとが生き生きと過ごせるようにそのひとの意向に沿って援助することをしてきたなぁ…いきいきと過ごせない症状が強いときはいっしょに悩んできたなぁ…
 新型コロナウイルス感染症によって、フィジカルディスタンスの必要性から、その絆が薄れてしまっています。空間と時間の共有、ノンバーバルを含むコミュニケーション、手当てなどの直接的身体接触などが難しくなっています。オンライン、リモート面会などで補える部分はありますが、代替のものでは通常の面会と比べるとどうしても十分でない、特に意識が曇ってきたり、発語がしにくくなってくると、そのような面会は役立たなくなっていく。一番必要なタイミングで有効な手立てがない…
 自分も含めて、その絆で癒されていた人がたくさんいるはずですが、入院してしまうと、より距離が離れてしまう。感染蔓延予防のために面会禁止…やむを得ないこととは言え、絆が薄れる、その距離は、残る苦痛を癒す一つの方法がなくなってしまう…
 こんなことがスタンダードになってしまうかもしれないのですが、そうならないように、はやくコロ助(藤子・F・不二雄先生すみません)が退治されることを心待ちにしています。

 最後までお付き合いありがとうございました。
 ご自身をいたわり、絆を大切に。そして十分に休養を取って下さいね。
 ウィズアウト コロナ!

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