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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.90
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2021  90
Journal Club
化学療法中の味覚障害に対する味覚および嗅覚トレーニングの影響
−TASTE試験
名桜大学
木村 安貴

Julia von Grundherr, Barbara Koch, Donata Grimm, Jannike Salchow, Luzia Valentini, Thomas Hummel, Carsten Bokemeyer, Alexander Stein, Julia Mann
Impact of taste and smell training on taste disorders during chemotherapy - TASTE trial
Cancer Manag Res. 2019 May 16;11:4493-4504. doi: 10.2147/CMAR.S188903. eCollection 2019.


【目的】
 本研究は、化学療法中の味覚障害に対する味覚および嗅覚トレーニングの潜在的な短期的影響を評価するために、外来化学療法を受けているがん患者を対象に実施されたパイロット試験である。
【方法】
 化学療法を受けている外来がん患者を対象に、味覚障害のスクリーニングとして味覚ストリップ(TS)テスト(0〜16点で評価)を実施した。患者は味覚障害の基準に基づき味覚障害ありとなしのグループに分けられ、味覚障害ありのグループ(介入群)は、ベースラインと3〜5週目に味覚と嗅覚のトレーニングと栄養カウンセリングが実施された。一方、味覚障害なしのグループ(非介入グループ)には、栄養カウンセリングのみ実施された。味覚と嗅覚トレーニングの内容は、栄養士の指導のもと、患者は目隠しされた状態で特定の飲み物(さまざまなフルーツジュースやお茶)と食べ物(プレッツェルスティック)を味わい、嗅神経を強化するために香り鉛筆(レモンやクローブ)の匂いを1日2回15秒嗅ぎ、さらに口腔衛生を保つことである。主要評価項目は、味覚障害のある患者の少なくとも50%で、臨床的に関連するTS得点が2点改善した者の割合とした。
【結果】
 対象は、消化器(n=29)、乳がん(n=31)、または肺がん(n=2)の患者62人(女性48人[77%]、男性14人[23%]、年齢54.5±11.6歳)であった。味覚障害は、乳がん患者よりも消化器がんの方が多かった。スクリーニングされた62人の患者のうち、30人の患者に味覚障害が認められた。主要評価項目は、介入を完了した患者の92%(n=23/25)で満たされた。介入群では、TS得点の中央値がベースラインでは7点であったのに対し、2週目には10点まで改善した(P≤0.001)。一方、非介入群(n=27/30)では、3カ月のフォローアップで味覚の変化を経験しなかった(P=0.897)。
【結論】
 味覚と嗅覚のトレーニングを伴う強化された栄養カウンセリングは、化学療法を受けている患者の味覚を改善する可能性がある。今後ランダム化試験が計画されている。
【コメント】
 化学療法を受ける患者の3分の2は味覚障害が生じており、長年症状緩和が難しいとされる症状のひとつである。これまで、亜鉛内服など様々な方法が提案されてきたが、感覚器をトレーニングするという視点で介入を行い、味覚障害の改善の見込みがある結果を導き出していることは大変興味深い。今後ランダム化試験を控えているが、化学療法に伴う味覚障害のメカニズムは複雑であり、どのようなメカニズムに対してこの介入が有効であるのかについての検討されることで、トレーニングの臨床への導入がより明確になると考える。

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