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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.90
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2021  90
Journal Club
がん患者遺族の不眠・飲酒量の変化とうつ・複雑性悲嘆との関連
東北大学大学院医学系研究科 保健学専攻 緩和ケア看護学分野
青山 真帆

Maho Aoyama, Yukihiro Sakaguchi, Daisuke Fujisawa, Tatsuya Morita, Asao Ogawa, Yoshiyuki Kizawa, Satoru Tsuneto, Yasuo Shima, Mitsunori Miyashita
Insomnia and changes in alcohol consumption: Relation between possible complicated grief and depression among bereaved family caregivers
J Affect Disord. 2020 Oct 1;275:1-6. doi: 10.1016/j.jad.2020.06.023. Epub 2020 Jun 24.


【目的】
 死別後の遺族は、不眠や飲酒量の増加など不健康行動の増加と、それに伴う、うつなどの健康リスクの増大がみられるとされている。しかし、実際にうつや複雑性悲嘆と睡眠や飲酒状況との関連について明らかにした研究は少なく、本研究はこれらの関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】
 日本における全国多施設遺族調査(J-HOPE3研究)の一部として実施した。2014年5月−7月に一般病院20施設、緩和ケア病棟133施設、在宅ケア施設22施設で死亡したがん患者遺族に自記式質問紙を送付した。うつはPatient Health Questionnaire 9(PHQ-9)、複雑性悲嘆はBrief Grief Questionnaire (BGQ)で評価した。
【結果】
 9,123名(一般病院814名、緩和ケア病棟7,291名、在宅ケア施設1,018名)の回答が解析対象となった。なんらかの不眠症状が認められた遺族の割合は46-61%、睡眠薬を使用している割合は14-16%であった。飲酒行動では、死別後に飲酒量が増加した割合は14%で、減少した割合は17%であった。不眠(OR: 1.48-12.88 全て p<0.0001)と飲酒量の変化(OR: 1.63-3.55; 全て p<0.0001)はいずれもうつ・複雑性悲嘆と有意な関連がみとめられ、この結果は人口統計学的要因で調整後も変わらなかった。飲酒量では死別後に増加のみでなく、減少したと回答した場合でも、うつ・複雑性悲嘆と有意に関連していた。
【結論】
 不眠症状を訴えている割合と比較し、実際に睡眠薬を使用している割合は少なかった。また、飲酒量の増加は不健康行動として注視されがちではあるものの、うつ、特に複雑性悲嘆との関連においては減少した場合においても関連がみとめられた。死別後の遺族の睡眠状況や飲酒状況を確認することは、死別後の精神的健康のアセスメントにもなりうると考えられる。
【コメント】
 死別後に悲しみや落ち込みがみられるのは自然で、専門的な介入がなくとも多くは回復するが、一定割合複雑性悲嘆やうつなどを抱える遺族もいる。これらの遺族をどのように早期に支援に繋げるかは課題である。「眠れていますか?」「お酒の量は増えて(減って)いませんか?」などは、周囲が比較的気兼ねなく尋ねることができると考えられ、それが遺族の精神的健康に対するアセスメントになりうることを明らかにした点が本研究の意義といえる。

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