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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.90
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2021  90
Journal Club
せん妄予防のためのスボレキサント −メタアナリシス−
国際医療福祉大学病院 薬剤部
佐藤 淳也

Shu Xu, Yuanyuan Cui, Jinhua Shen, Peili Wang
Suvorexant for the prevention of delirium: A meta-analysis
Medicine (Baltimore). 2020 Jul 24;99(30):e21043. doi: 10.1097/MD.0000000000021043.


【目的】
 せん妄は、外科的処置を受けた患者や終末期がん患者において頻繁に遭遇する認知機能障害であり、入院期間の延長、生活の質の低下、死亡率の増加、医療従事者や家族の負担にも繋がる。従って、せん妄を予防する薬剤は、臨床的に重要である。本研究では、不眠症の治療に使用されるオレキシン受容体拮抗薬であるスボレキサントのせん妄と関連症状における有効性をメタアナリシス手法により解析した。
【方法】
 データは、PubMed、EMBASE、およびCochrane Libraryから抽出された。プールデータは、せん妄の発生率、せん妄の発症までの時間、死亡率、または有害事象について、オッズ比(OR)と標準化された平均差(SMD)に解析された。
【結果】
 7件の研究から402人のスボレキサント治療患者と487人の対照患者がメタアナリシスに含まれた。患者は、ICU入室患者の研究が2件、ICU以外の患者の研究が4件、両方を対象とした研究が1件であり、いずれも日本人であった。スボレキサントの投与量は、15または20mgであった。2件の研究は、プラセボとの比較であり、残りの5件は、他の睡眠誘発剤(ラメルテオン、ゾルピデム、リルマザホン、エチゾラム、ブロチゾラム、フルニトラゼパム、ジアゼパムなど)との比較であった。スボレキサント治療患者では、せん妄の発生率(OR=0.30; 95% CI[0.21-0.44], p<0.001)およびせん妄発症までの時間(SMD=0.44; [0.13-0.74], p=0.006)が有意に低下した。しかし、二次転帰である入院期間、薬剤の有害事象や死亡率においては、スボレキサントの利点は確認されなかった。
【結論】
 メタアナリシスの結果は、スボレキサントがせん妄の発症を予防できることを支持するものである。
【コメント】
 準備因子(高齢、認知症)と促進因子(身体・精神的苦痛)が背景となり、手術や薬剤が最終的な直接因子として発症する。睡眠障害は、せん妄のリスク因子として知られる(Crit Care Med 2018; 46: e1204-12.)。一方で、これに対するベンゾジアゼピン系睡眠剤もせん妄の直接因子となっている(Arch Neurol. 2000 Dec; 57(12): 1727-31.)。一度せん妄が発症すると、抗精神病薬による治療を行うが、その有効性も限られている(Cochrane Database of Systematic Reviews, CD004770. pub3)ことからも、せん妄を予防するあるいはせん妄発症を促進しない睡眠剤の選択は重要である。スボレキサントは、せん妄予防には有益な薬剤の選択であるが、がん患者の不眠を十分解消するかは、今後の興味のあるところである。

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