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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.90
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2021  90
Journal Club
慢性心不全患者に対する遠隔的な早期緩和ケア介入の無作為化比較試験:
ENABLE CHF-PC試験
名古屋大学大学院 医学系研究科 総合保健学専攻高度実践看護開発学講座
佐藤 一樹

Marie A Bakitas, J Nicholas Dionne-Odom, Deborah B Ejem, Rachel Wells, Andres Azuero, Macy L Stockdill, Konda Keebler, Elizabeth Sockwell, Sheri Tims, Sally Engler, Karen Steinhauser, Elizabeth Kvale, Raegan W Durant, Rodney O Tucker, Kathryn L Burgio, Jose Tallaj, Keith M Swetz, Salpy V Pamboukian
Effect of an Early Palliative Care Telehealth Intervention vs Usual Care on Patients With Heart Failure: The ENABLE CHF-PC Randomized Clinical Trial
JAMA Intern Med. 2020 Sep 1;180(9):1203-1213. doi: 10.1001/jamainternmed.2020.2861


【目的】
 進行期心不全患者に対する遠隔的な早期緩和ケア介入の効果を検証する。
【方法】
 単盲検の多施設共同無作為化比較試験を2015〜2019年に行った。対象施設は米国の田舎住民の多い地域の大学病院と退役軍人病院で、対象者は50歳以上でNYHA分類Ⅲ-Ⅳまたは心不全ステージ分類C-Dの心不全患者415名とした。介入群208名はENABLE CHF-PCという早期緩和ケア介入を受けた。具体的には、個別の緩和ケアコンサルテーション、6週間ごとの看護師による遠隔的なコーチング(20〜40分/回)、毎月の経過観察を48週間実施した。対照群207名は循環器専門家の診療や心不全教育を受けた。主要評価項目は16週後のKansas City Cardiomyopathy Questionnaire[KCCQ]とFunctional Assessment of Chronic Illness Therapy-Palliative-14[FACIT-Pal-14]によるQOL評価とHospital Anxiety and Depression Scale [HADS]による不安・抑うつ評価、副次評価項目は16週後の全般的健康観、痛み、過去2カ月間の入院日数と救急外来利用とした。
【結果】
 対象者の人種は白人44%、黒人54%、居住地域は都市部74%であった。主要評価項目では、KCCQスコアの改善は介入群3.9±1.3 vs 対照群2.3±1.2, 効果量d=0.07, p=.37、FACIT Pal-14スコアの改善は1.4±0.6 vs 0.2±0.5, d=0.12, p=.12、HADS不安スコアの改善は0.0±0.2 vs -0.1±0.2, d=0.02, p=.83、HADS抑うつスコアの改善は0.7±0.2 vs 0.3±0.2, d=0.09, p=.24であった。副次評価項目では、身体的な全般的健康観スコアの改善d=0.08, p=.35、心理的な全般的健康観スコアの改善d=0.06, p=.49、痛みスコアの改善d=0.26, p=.003、入院日数の短縮p=.11、救急外来利用の減少p=.21であった。
【結論】
 慢性心不全患者に対する遠隔的な早期緩和ケア介入により16週後のQOLや不安・抑うつの有意な改善を示すことはできなかった。痛みのみ統計的に有意かつ臨床的に意味ある改善を示した。
【コメント】
 筆頭著者であるBakitasは進行期がん患者対象の早期緩和ケア介入試験を先駆的に行い、看護師による遠隔的なフォローアップを中心とした介入により患者アウトカムや家族アウトカムの改善などを示した(ENABLE II project:早期緩和ケア介入に効果あり, ニューズレター45号https://www.jspm.ne.jp/newsletter/nl_45/nl450701.html; ENABLE III project:早期緩和ケアの介入時期に効果の違いなしhttps://www.jspm.ne.jp/newsletter/nl_72/nl7203.pdf)。同様の介入を心不全患者に適用したのが本試験であるが有意な効果は示せなかった。筆者らは対象患者のQOLが良好で改善の余地が乏しかったことと介入のアドヒアランスが低かったことを理由として考察している。非がん疾患での緩和ケア介入の開始基準は明らかでない。効果的な緩和ケア介入の内容の検討だけでなく、緩和ケア介入の効果的な集団の同定も研究課題である。

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