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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.90
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2021  90
巻頭言
"The night is long that never finds the day."
「明けない夜はない」
ベルランド総合病院 緩和ケア科
山ア 圭一



 コロナウイルス感染症が猛威を振るう中、新しい年、2021年が始まりました。常にマスクの着用、手指消毒の徹底、ソーシャルディスタンスの確保のような新しい生活様式、東京オリンピックの開催延期、テレワークの普及、各学会の学術大会までもがWEB開催など、ほんの1年少し前には誰がこのような状況を想像できたでしょうか?誰も想像できた人はいないであろうと言っても過言ではないしょう。日本だけでなく全世界、人類全体が危機にさらされている状況であるのも確かであります。みなさんも、先の見えない状況の中で、日々過ごしている状態ではないかと思われます。でも入院している患者さんはもっと辛い思いをしていると思います。家族に会えない辛さ、会えない患者さんの状態がわからない家族の辛さ、コロナ禍前の当たり前が当り前でなくなり、医療者も以前にもまして家族への説明時間が少なくなってしまっているのではないでしょうか?何も知らされないこれほど心配なことはないと思います。実はこの経験は、私も昨年、父親が入院し、患者の家族として経験したことであります。自分は医師であるのである程度はわかるものの、一般の患者さんの家族にすると、これほど辛く不安な事はないであろうと思いました。特に重い病を抱えた患者さんの家族さんに対して、こまめに患者さんの状態をお伝えするこのほんの少しの努力で、どれだけ患者さんの家族さんは安心できるかと思います。オンラインの面会は様々な施設で行われるようになりましたが、オンラインで家族への説明はまだそんなにされていないように思えます。顔を合わせてのコミュニケーションという、今まで当たり前のことが当たり前にできないというこれほど困難な状況であるからこそ、守るべきものは守り、しかし柔軟に対応し、新しいことを見出す。これこそが私達に求められているものかと思います。もしコロナウイルス感染症が人と人との不和と不信を募らせるなら、それこそ私たちはコロナウイルスに敗北となってしまいます。シェイクスピアの作品には"The night is long that never finds the day."「明けない夜はない」と言う言葉があります。辛い夜は長く続かない、そう信じて、今、私たちができる事を見つけ、それを実行に移す事が大事なことであり、もっとも基本であり、でも、新しい形を求められている人と人とのコミュニケーション、これこそが今、私達ができる重い病を抱える患者さんへの緩和ケアの一つであるのではないかと思います。

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