line
Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.88
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2020  88
Journal Club
ICUにおける早期緩和ケアコンサルテーション:クラスター無作為化クロスオーバー試験
東北大学大学院医学系研究科 保健学専攻緩和ケア看護学分野
田中 雄太

Jessica Ma, Stephen Chi, Benjamin Buettner, Katherine Pollard, Monica Muir, Charu Kolekar, Noor Al-Hammadi, Ling Chen, Marin Kollef, Maria Dans
Early Palliative Care Consultation in the Medical ICU: A Cluster Randomized Crossover Trial
Randomized Controlled Trial Crit Care Med. 2019 Dec; 47(12):1707-1715. doi: 10.1097/CCM.0000000000004016.


【目的】
 ICUにおいて早期緩和ケア介入によって患者アウトカムが改善されるかを検証する。
【方法】
 2017年8月〜2018年5月に、単施設ランダム化クロスオーバー試験を実施した。先行研究をもとに設定した緩和ケアスクリーニングツールを使用し、それに該当したICU入室患者(18歳以上)を対象とした。Barnes Jewish Hospitalの2つのICU(16床と18床)を、緩和ケア介入群と通常ケア群に無作為に割り付け、6週間の非介入期間後にクロスオーバーした。
 介入群は、ICU入室後48時間以内に緩和ケアチームによる介入を受け、「患者と家族の身体的・心理的ニーズの特定」「ニーズを満たす方法についてプライマリチーム(ICU)との話し合い」「患者の意思決定支援」などが実施された。一方、対照群は通常ケアを受けた。
 主要アウトカムは、退院前にDNR/DNIコード(Do-not-resuscitate/Do-not-intubate)に移行した患者の割合とした。副次アウトカムは、ICU入室期間、病院入院期間、ホスピスへの退院、人工呼吸器使用時間、血管作動薬の持続時間、気管切開術、CPR実施、死亡率、退院後の救急外来受診、病院の再入院とした。
【結果】
 介入群に97名、対照群に102名が割り付けられた。
 DNR/DNIコードに移行した患者割合は、介入群は対照群と比較して有意に高かった(50.5% vs 23.4%、95%CI 13.6-39.1%;p<0.0001)。加えて、介入群は、研究登録から30日間のDNR/DNIコードへより早く、より頻繁に移行していたことが明らかになった(p<0.001)。
 ホスピスケアへ移行する割合は介入群では有意に高く(18.6% vs 4.9%;p=0.002)。また、人工呼吸器使用日数は介入群で2日短く(中央値4日 vs 6日;p=0.041)、入院中の気管切開術の実施率も介入群にて低い傾向にあった(1.0% vs 7.8%;p=0.035)。加えて、退院まで生存していた患者のうち退院後30日以内に救急外来を受診した患者の割合に関しても、介入群で低い傾向にあった(1.3% vs 12.5%;p=0.0067)。一方で、病院死亡率(21.7% vs 27.5%)、30日死亡率(35.1% vs 36.3%)、ICU入室期間(median 5日 vs 5.5日)、病院入院期間(median 10日vs 11日)については、群間に統計的に有意な差はなかった。
【結論】
 ICUにおける緩和ケアチームによる早期緩和ケア介入は、DNR/DNIの移行、ホスピスへの紹介、医療資源の利用と有意な関連があることが明らかになった。
【コメント】
 ICUでの早期緩和ケア介入によって、ICU入院、滞在期間、医療資源利用を減少させるなどの有益な効果が示唆されているが、ランダム化試験の報告が少なく、研究方法論的としてエビデンスに制限があるといわれている(Aslakson R, et al. J Palliat Med. 2014)。そのため、単施設で行われた試験ではあるものの、本研究の意義は大きいといえる。注意すべき点として、DNR/DNIコードへの移行は、QOLや患者/家族の満足度を直接測定するものではないということが挙げられ、今後さらなる研究が必要である。

Close