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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.88
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2020  88
Journal Club
がん患者の死亡の質に対する認知症の影響:在宅緩和ケア使用者の観察研究
北海道がんセンター 薬剤部
高田 慎也

Kayo Hirooka, Miharu Nakanishi, Hiroki Fukahori, Atsushi Nishida
Impact of dementia on quality of death among cancer patients: An observational study of home palliative care users
Geriatr Gerontol Int. 2020 Apr;20(4):354-359. doi: 10.1111/ggi.13860. Epub 2020 Feb 4.


【目的】
 現在、がん患者(高齢者を対象)の7〜30%が認知症を有すると報告されており、認知症を有するがん患者は十分な緩和ケアを受けておらず、終末期QOLは認知症がない患者よりも低い可能性が指摘されていた。しかし、実態を正確に反映している調査結果は報告されていない。そこで、高齢がん患者の認知症と死亡の質への影響を調査した。
【方法】
 日本の訪問看護ステーション1,200施設を無作為に抽出し、その施設で高齢がん患者の看取りを経験した場合に、最近に死亡した高齢がん患者1名を想起して、その患者に終末期ケアを提供した看護師がカルテを参照しながらアンケートに回答する内容であった。がん患者(508人)の認知状態、がん関連症状、および死亡の質(終末期QOL)に関して回答を得た。使用した尺度は、終末期がん患者の看取りの質評価尺度(Good death inventory)を用いた。主な解析は、死の質を目的変数に、認知症との関連を重回帰分析で、死亡場所や主介護者の有無との関連を認知症有無での層別化回帰分析で検討した。
【結果】
 死の質(終末期QOL)の評価は認知症のない患者の方が高く(β=-0.17, P<0.001)、死亡場所が自宅である(β=0.26, P<0.001)や主介護者がいる(β=0.15, P=0.001)患者の方が高い評価であった。認知症の有無別に死の質の評価との関連を検討すると、死亡場所が自宅であることは認知症の有無にかかわらず評価が高いことと関連した(認知症なし:β=0.30, P<0.001、認知症あり:β=0.22, P=0.009)が、主介護者の存在は認知症のある患者のみで死の質の評価と関連した(認知症なし:β=0.09,P=0.12、認知症あり:β=0.30, P<0.001)。
【結論】
 認知症を合併しているがん患者は、非合併患者と比較し、死の質(終末期QOL)を有意に低かった。本研究結果は、認知症のがん患者とその家族の意思決定を強化するための具体的な支援戦略を開発し、患者とその家族との終末期ケアの議論を強化することの重要性を示している。
【コメント】
 終末期QOLが改善する因子として自宅での死亡や主介護者の存在が明らかとなったことは患者満足度の改善に有意義である。一方で、認知症の合併は、疼痛、症状の緩和などが十分に行われないことで、終末期QOL低下を招いている可能性や認知症合併時には、達成しにくい項目が多いことなども一因と考える。本研究のLimitationとしては、Good deathの評価が看護師による振り返りによる代理評価であり、このことがバイアスになっていることも重要である。

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