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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.88
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2020  88
Journal Club
乳がんにおけるビスホスホネートによる骨転移の管理:
投与間隔に関するシステマティックレビュー
国際医療福祉大学病院 薬剤部
佐藤 淳也

Mei Yang, Xijie Yu
Management of bone metastasis with intravenous bisphosphonates in breast cancer: a systematic review and meta-analysis of dosing frequency
Support Care Cancer. 2020 Jun;28(6):2533-2540.doi: 10.1007/s00520-020-05355-7. Epub 2020 Feb 14.


【背景】
 ビスホスホネートは、乳がんに限らず骨転移のあるがん患者の骨関連イベント(骨折、疼痛、高カルシウム血症など)のリスクを軽減するために3-4週毎に投与されている。しかし、最近の臨床試験では、ビスホスホネートの投与頻度を減らしたde-escalation治療は、標準的な頻度の治療に比べ、劣らない可能性が示唆されている。本論文では、これら2つの治療間隔(Standard法:4週毎とde-escalation法:12週毎)の有効性と安全性をシステマティックレビュー手法で検討した。
【方法】
 MEDLINE、PubMed、Embase、Cochraneライブラリーなどのデータベースからビスホスホネートが投与された試験を抽出した。アウトカムは、骨関連イベントの他、ビスホスホネートの副作用である腎機能障害と顎骨壊死を含んだ。
【結果】
 4つのランダム化臨床試験(n=1,721)がデータ抽出対象となった。1つの試験は、パミドロン酸であり、他3試験は、ゾレドロン酸を用いた。骨関連イベントの発生率において、Standard法(193件/862名)とde-escalation法(202件/859名)の間に有意差はなかった(相対リスク比;1.05, 95%信頼区間;0.88-1.25)。腎機能障害については、Standard法(21件/433名)とde-escalation法(17件/430名)の間に有意差はなかった(相対リスク比;0.80, 95%信頼区間;0.43-1.48)。顎骨壊死については、Standard法(5件/435名)とde-escalation法(4件/431名)の間に有意差はなかった(相対リスク比;0.82, 95%信頼区間;0.15-4.53)。3つの試験では、ランダム化前にビスホスホネートが投与されている患者が存在した。探索的解析として、ビスホスホネート既治療患者の骨関連イベント発生率(159件/866名)は、未治療患者(236件/855名)に比べ有意に少なかった(オッズ比;0.59, 95%信頼区間;0.47-0.74, p<0.00001)。
【結論】
 12週毎のビスホスホネートの投与は、骨関連イベントや副作用(腎障害と顎骨壊死)、さらに治療コストの観点で、標準的な4週毎の投与に劣るものではないであろう。ただし、投与間隔を延長する前に標準的間隔による数カ月の治療を行うことを推奨する。
【コメント】
 今回のレビューでは、客観性の高い4つランダム化比較試験が抽出され、ビスホスホネートの投与間隔を延長する妥当性が示された。しかし、3つの試験では、ランダム化前に2カ月から最大15カ月前にビスホスホネートの投与を受けたのちにde-escalationが行われている。従って、ビスホスホネート未治療例には、標準治療を数カ月行ったのちに延長法に切り替えることを推奨しているが、この標準的治療期間の妥当性は不明である。
 今回、ビスホスホネートの投与間隔を延長しても、腎機能障害や顎骨壊死は低減しなかった。しかし、ゾレドロン酸を例にすれば、先発品(24,070円/4mg)および後発品(8,811円/4mg)の違いがある。de-escalation法でも標準的治療期間があり、その期間の治療コストの差は少ないが、これを終えてde-escalation戦略に切り替えれば、4週毎および12週毎の治療コストは、それぞれ28.9万円/年(先発4週毎)および7.2万円/年(後発4週毎)、10.6万円/年(先発12週毎)および2.6万円/年(後発12週毎)と、10倍以上の違いがある。治療間隔の延長は、患者の通院の負担も軽減するであろう。本研究は、骨転移治療に対する今後のビスホスホネートの使用戦略に有用な情報をもたらしたと思われる。

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