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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.92
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2021  92
よもやま話
緩和ケアはどこへいく?
飯田市立病院 緩和ケア内科
山田 武志



「緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。」
 皆さんご存知の緩和ケアの定義です。WHOが1990年に終末期の医療として定義したものを、2002年に再定義したものであり、もちろん当学会のHPにもしっかりと掲げられています。
 これまでがんの【緩和ケア】に主に関わってきた私は、「緩和ケアというと、私は終末期なのでしょうか?」と言う患者さんからの問いに対して、この定義に沿うように「終末期などの時期に関わらず、がんや治療の副作用などの症状を緩和することでQOL、ADLを向上させようと言う考え方が緩和ケアですよ。」と説明をしながら日々【緩和ケア】を行ってきました。多くの先輩方の努力のお陰で、【緩和ケア】と言う言葉もずいぶん一般化してきており、また父を膵癌で亡くした30年ほど前の【緩和ケア】=終末期医療という一般的なイメージもかなり変わってきていると感じます。

 今年の日本緩和医療学会学術集会でも多くのご講演で話題となっていましたが、ここ20年のがん治療は劇的に進化しており、それと同時に【緩和ケア】も進化してきました。現在の私たち急性期病院の緩和ケアチームが行っている【緩和ケア】は、主に支持療法と終末期ケアの二本柱で行っています。私自身は、がん治療を行う上での『支持療法』が長期間(年単位)にわたって行われ、サバイバーには治療や副作用によって生じてしまった苦痛の『支持療法』が生涯に渡って行われ、そして終末期(がんによるものか老衰によるものかは微妙な方も大勢みえることになってきていますが)には『終末期ケア』が行われるという形という認識を持っています。それぞれかなり方向性が異なる医療でもあり、今のままではどちらも中途半端になってしまっている様な気もしています。
 一方でここ2〜3年、心不全や呼吸不全、神経難病などがん以外の疾患にも【緩和ケア】をという取り組みが進んでいます。しかし、私にはこの【緩和ケア】という言葉は以前の様ないわゆる終末期ケアという意味合いが強く感じられてしまいますが、皆さんはどのように感じておられるのでしょうか。

 がんの緩和ケア、地域緩和ケア、そして非がんの緩和ケアも言葉としては同じ【緩和ケア】となっていますが、それぞれ意味合いは異なっています。専門職である我々には何となく分かっていても、周囲の人々に通じないのであれば、一般の人々に広めるのは難しいものとなってしまうのでは無いでしょうか。終末期医療もこれからの時代を考えるまでもなく、とても大切な医療だとは思いますが、支持療法も終末期医療も【緩和ケア】としてまとめてしまうのはこれからの時代は少し強引な気がしてきています。【緩和ケア】を歴史的な側面から見ると、時代とともに意味合いも変化してきていますので、これからも変化し続けていくものなのでしょうが、一体どこへ向かっていくのか、これから【緩和ケア】を志してくれる若者たちのためにも、我々が道標を示せると良いのですが…。

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