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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.92
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2021  92
Journal Club
非がん患者とがん患者の死亡前1年間の緩和ケア提供の比較
名古屋大学大学院 医学系研究科 総合保健学専攻高度実践看護開発学講座
川島 有沙

Kieran L Quinn, Peter Wegier, Therese A Stukel, Anjie Huang, Chaim M Bell, Peter Tanuseputro
Comparison of Palliative Care Delivery in the Last Year of Life Between Adults With Terminal Noncancer Illness or Cancer
JAMA Netw Open. 2021 Mar 1;4(3):e210677. PMID: 33662135 PMCID: PMC7933993. DOI: 10.1001/jamanetworkopen. 2021.0677.


【目的】
 非がん患者とがん患者の間では、緩和ケアへのアクセスに格差がある。がん患者は、非がん患者に比べて緩和ケアを受ける可能性が高く、早期に緩和ケア介入がされやすい傾向があることが分かっている。しかし、疾患の種類による緩和ケアの提供方法の違いに関する研究は十分に行われていない。本研究では、非がん患者とがん患者の死亡前1年間の緩和ケア提供について調べ、比較することを目的とする。
【方法】
 カナダのオンタリオ州で、2010年1月1日から2017年12月31日の間に非がん疾患(心不全、COPD、末期腎不全、肝硬変、脳卒中、認知症)とがんで死亡し、死亡前1年間に新たに緩和ケアを受けた成人を対象とした。医療行政データを用いて、緩和ケア提供の構成要素(開始時期、開始場所、ケアモデル、医師の構成、ケア提供の場所、死亡場所など)を調べた。主要評価項目は、緩和ケアの開始時期で、死亡前30日以内・死亡31〜90日前・死亡90日以前に分類された。
【結果】
 がん・非がん疾患で死亡前1年間の緩和ケア提供を受けた145,709人のうち、21,054人が臓器不全、14,033人が認知症、110,622人ががんで死亡した。がん患者(32,010[28.9%])は、臓器不全や認知症患者に比べて、緩和ケアが早期(死亡90日以前)に開始されていた。(臓器不全3,349[15.9%];絶対差13.0%;標準化差0.3、認知症2,148[15.3%];絶対差13.6%;標準化差0.3)更に、がん患者は緩和ケアが病院で開始されやすく、複数の場所でケア提供される傾向があった。また、がん患者は、ジェネラリストモデル(一般的緩和ケア)ではなく専門家モデル(専門的緩和ケア)を受ける傾向があり、トレーニングを受けた医師から緩和ケアを受けることが多かった。
【結論】
 死亡前1年間の緩和ケア提供には、非がん疾患とがん疾患の間で大きな違いがあった。疾患による緩和ケアの提供方法の違いを明らかにしたことは、医療者の教育・訓練の強化や、あらゆる環境での緩和ケアへの公平なアクセスの改善の必要性などに重要な意味を持つ。
【コメント】
 緩和ケア提供の患者・医療者レベルでの潜在的な格差の存在は、非がん緩和ケアプログラムの実装に向けての課題となり得る。非がん患者とがん患者の緩和ケア提供の構成要素の違いを集団レベルで記述し、格差を明らかにしたことが、本研究の意義である。

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