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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.92
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2021  92
Journal Club
進行がん患者における人生の意味:多国籍研究
NPO任意団体プチボヌール(小さな幸せ)
おおたかの森こどもクリニック
森川 みはる

Anna L Gravier, Omar Shamieh, Carlos Eduardo Paiva, Pedro Emilio Perez-Cruz, Mary Ann Muckaden, Minjeong Park, Eduardo Bruera, David Hui
Meaning in life in patients with advanced cancer: a multinational study
Support Care Cancer. 2020 Aug; 28(8): 3927-3934. PMID: 31858248. DOI: 10.1007/s00520-019-05239-5. Epub 2019 Dec 19.


【目的】
 5カ国における進行がん患者の人生における意味の違いと、人生の意味に関連する要因を調査した。
【方法】
 進行がん患者を対象とした前向き縦断的多施設共同観察研究の二次解析である。米国、ブラジル、チリ、インド、ヨルダンの5つの三次医療機関の外来緩和ケアクリニック受診者が参加した。人生の意味は言語検証されたMeaning in Life(人生の意味)尺度(4領域;価値、目的、目標、リフレクション、8設問;4点リカートスケール)を用いて評価した。合計スコアは8〜32点で、スコアが高いほど人生の意味が大きいことを示す。調査開始前と追跡調査時にEdmonton Symptom Assessment System:ESASを調査した。アルコール依存症のリスク評価はCAGE質問票を、全体的な機能はKarnofsky performance status(KPS)で評価した。質問は、初診時に実施した。
【結果】
 進行がん患者728名が登録され、内訳は米国(n=300)、ヨルダン(n=182)、ブラジル(n=131)、チリ(n=71)、インド(n=44)であった。患者の86.8%が転移性がんであった。
 人生の意味スコアの中央値は25/32(四分位範囲23〜28)であった。国別による人生の意味の合計スコアに差はなかったが(P=0.11)、領域別サブスコアは有意差が認められた。単変量解析では、身体的症状(痛み、疲労、眠気、呼吸困難、不眠)、情緒的苦痛(うつ、不安)、実存的関心(スピリチュアルペイン)、経済的問題(経済的苦痛、経済的影響)の強度が高い患者、また、CAGEスコアが高い患者は、人生の意味スコアが低かった。一方、結婚していること、楽観的であること、教育水準が高いことは、人生の意味スコアが高いことと関連していた。多変量解析では、人生の意味スコアの総得点が高いことは、楽観的であることに加えて、抑うつ、スピリチュアルペイン、および経済的苦痛が低いことと有意に関連していた。出身国は、人生の意味の有意な予測因子ではなかった。
【結論】
 出身国は、人生の意味の決定要因ではなかった。しかし、人生の意味は、楽観主義、抑うつ、スピリチュアルペイン、および経済的苦痛と有意に関連しており、これらの構成要素に取り組むことにより、進行がん患者における人生の意味を改善する可能性が強調された。
【コメント】
 近年、がん患者における人生の意味や目的の認識、およびそれらの健康状態の関連について関心が高まっている。本研究は二次的な分析であるため、仮説生成としての知見であり、一般化できない。本研究で用いられた人生の意味尺度は8つの質問で評価でき、臨床的にも取り入れやすい。人生の意味を評価することは、がん患者の実存的苦痛に気づき、学際的な介入の必要性を認識できることを示唆している。

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