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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.92
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2021  92
Journal Club
早期緩和ケアの有無での終末期ケアの比較:傾向スコアマッチング法を利用した人口ベースの後ろ向きコホート研究
名古屋大学大学院 医学系研究科 総合保健学専攻看護科学コース
奥原 康司

Hsien Seow, Rinku Sutradhar, Fred Burge, Kimberlyn McGrail, Dawn M Guthrie, Beverley Lawson, Urun Erbas Oz, Kelvin Chan, Stuart Peacock, Lisa Barbera
End-of-life outcomes with or without early palliative care: a propensity score matched, population-based cancer cohort study
BMJ Open. 2021 Feb 12;11(2):e041432. PMID: 33579764 PMCID: PMC7883853. DOI: 10.1136/bmjopen-2020-041432.


【目的】
 早期緩和ケア(以下、EPC)の有無で、死亡前1カ月間に積極治療と在宅緩和ケアの利用率が異なるかどうかを調査する。
【方法】
 後ろ向きコホート研究であり、がん登録、人口動態、退院・救急・在宅ケアデータベース、診療報酬データベースを用いた。対象はカナダ・オンタリオ州で2004年から2014年に死亡したすべてのがん患者とし、がんと診断後6カ月以内に死亡した者は除外した。EPC群は、緩和ケア介入を早期(死亡前6〜12カ月)に受けたと定義した。非EPC群は、緩和ケア介入が晩期(死亡前6カ月以内)にあった、もしくは緩和ケア介入がなかったとした。緩和ケアの定義は、緩和目的の在宅ケア、もしくは緩和ケア診療である。両群はそれぞれ、長期療養施設の入所の有無の層別に傾向スコアによりEPC群と非EPC群を1:1でマッチングし、終末期ケアを比較した。傾向スコアは性別、年齢、併存疾患などの共変量により算出した。評価項目は、病院死亡、死亡前30日の積極治療(救急受診、入院、ICU入室)、在宅緩和ケア(緩和ケアを目的とした医師の往診、訪問看護、自宅での個別支援)とした。両群はそれぞれ長期療養施設の入所の有無で層別化し比較した。
【結果】
 対象は、144,306人のがん患者で構成された。長期療養施設利用群ではEPC群と非EPC群が36,238組、非利用群では3,586組がマッチングした。積極的治療では、いずれのサブグループでもEPC群の方が有意に、病院死亡が少なく(長期療養施設利用群リスク差-10%、非利用群-13%)、延命治療の実施が少なく(-10%、-10%)、死亡前の救急外来利用が少なかった(-4%、-5%)。在宅緩和ケアでは、EPC群の方が有意に、死亡前の医師の訪問が多く(+10%、+14%)、緩和目的の訪問看護が多く(+22%、+37%)、緩和目的の個別支援が多かった(+16%、+30%)。
【結論】
 死亡前6カ月以前に緩和ケアを受けたがん死亡患者は、積極治療を受ける可能性が低く、在宅緩和ケアを受ける可能性が大きかった。
【コメント】
 非EPC群には緩和ケア介入のない集団と晩期に緩和ケア介入のあった集団が含まれている。そのため、感度分析では非EPC群をわけてそれぞれEPC群と比較し、主分析と同様の差を示した。また、本研究の重要な意義として、リアルワールドデータを用いており、実臨床での緩和ケアの効果の可能性を示したことが挙げられる。ただし、評価に用いたアウトカムは医療利用の頻度であり、患者の満足度やQOLへどのような影響があったかは不明であるため、解釈には注意が必要である。

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