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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.92
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2021  92
Journal Club
進行がん悪液質に対する静脈栄養のQOLに関するインパクト:RCT
小牧市民病院
山本 泰大

Carole Bouleuc, Amelie Anota, Cecile Cornet, Ghislain Grodard, Antoine Thiery-Vuillemin, Olivier Dubroeucq, Nathalie Cretineau, Veronique Frasie, Vincent Gamblin, Gisele Chvetzoff, Laure Favier, Christophe Tournigand, Marie-Christine Grach, Bruno Raynard, Sebastien Salas, Geraldine Capodano, Lionel Pazart, Regis Aubry
Impact on Health-Related Quality of Life of Parenteral Nutrition for Patients with Advanced Cancer Cachexia: Results from a Randomized Controlled Trial
Oncologist. 2020 May;25(5):e843-e851. PMID: 32212354 PMCID: PMC7216468 DOI: 10.1634/theoncologist. 2019-0856


【目的】
 低栄養は進行がん患者のQOLや予後を悪化させる。本研究の目的は、腸管障害がない進行がん悪液質患者に対して、静脈栄養は経口摂取に上回る臨床上の利点があるかを評価することである。
【方法】
 本試験は前向き多施設非盲検ランダム化比較試験で、低栄養の進行がん患者に対して最適な栄養ケアを提供した上で、補助的静脈栄養の投与の有無でランダム割り付けした。ランダム化には、Zelen法を使用した。栄養、PS、QLQ-C15-PALを用いたQOLをベースラインならびに亡くなるまでの毎月評価した。主要評価項目はQOLが悪化するまでの時期(DFS)で、QLQ-C15-PALの値がベースラインから10点以上悪化するもしくは死亡した場合と定義した。
【結果】
 ランダム化された患者148人中、静脈栄養群は48人、経口栄養のみの対照群は63人であった(早期脱落か同意が得られなかった患者は37人)。ITT解析では、以下の3つの分野のDFSは2群で差はなかった:全体的な健康状態(HR 1.31, 95%CI 0.80-1.94, p=0.18)、身体機能(HR 1.58, 95%CI 1.06-2.35, p=0.024)、全身倦怠感(HR 1.19, 95%CI 0.80-1.77, p=0.40)。生存に関しては、静脈栄養群の方が悪い傾向があった(注:ここでのp値は0.016以下を有意な差と設定している)。As treated解析では、重篤な副作用(主に感染)は、経口摂取のみより静脈栄養群の方が多かった(p=0.01)。
【結論】
 進行がんで低栄養がある患者において、静脈栄養群は経口摂取のみの群に比べて、QOLも余命も改善せず、重篤な副作用を増やす。
【コメント】
 この研究での静脈栄養の介入とは1,000kcal/日以上の中心静脈栄養のことであり、Bouleuc Cらは3カ月以下の生命予後の終末期がん患者へは実施しないことを推奨している。Refractory cachexiaに対しては静脈栄養が不利益をもたらす可能性があり、本研究結果はそれを支持する結果であったと思われる。ただし、がん悪液質のstage、生命予後の長いがん患者に対しての中心静脈栄養を行うタイミングについては未だ明確な答えは出ておらず、臨床上判断に悩む場面は多い。今後、更なる研究が実施され、エビデンスが蓄積されることを期待する。

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