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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.89
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2020  89
Journal Club
進行期肺・消化器がん患者に対する早期緩和ケアの多施設共同無作為化比較試験:
Alliance A221303試験
名古屋大学大学院 医学系研究科 総合保健学専攻高度実践看護開発学講座
佐藤 一樹

Jennifer S Temel, Jeff Sloan, Tyler Zemla, Joseph A Greer, Vicki A Jackson, Areej El-Jawahri, Mihir Kamdar, Arif Kamal, Craig D Blinderman, Jacob Strand, Dylan Zylla, Christopher Daugherty, Muhummad Furqan, Jennifer Obel, Mohammad Razaq, Eric J Roeland, Charles Loprinzi
Multisite, Randomized Trial of Early Integrated Palliative and Oncology Care in Patients with Advanced Lung and Gastrointestinal Cancer: Alliance A221303
J Palliat Med. 2020 Jul;23(7):922-929. doi: 10.1089/jpm.2019.0377. Epub 2020 Feb 7. PMID: 32031887 PMCID: PMC7307668


【目的】
 進行期がん患者に対する早期緩和ケア介入の効果を多施設共同無作為化比較試験により検証する。
【方法】
 米国の臨床試験グループAllianceの参加病院約20施設で1施設15名を目安に進行期肺がん・消化器がんと新規に診断された患者をリクルートし、介入群(n=195)と通常ケア群(n=196)に無作為に割り付けた。介入群では緩和ケア専門家の診察を月1回以上受け、通常ケア群では必要時に緩和ケア専門家のコンサルテーションを受けた。主要評価項目はがん関連QOL評価(FACT-G)のベースラインから12週後までの変化、副次評価項目は不安、抑うつ、予後や終末期ケアに関するコミュニケーションとした。
【結果】
 対象者の病状悪化・死亡や調査期間などのために主要評価項目の測定は49.3%(n=193/391)でしか完遂できなかった。介入のアドヒアランスは、12週間で14.9%(n=29/195)しか緩和ケア専門家の診察を受けていなかった。主要評価項目である12週間でのFACT-Gの変化は、介入群で3.35±14.7、通常ケア群で0.12±12.7であり、有意差をみとめなかった(p=0.10)。
【結論】
 進行期がん患者を対象とする緩和ケア介入の多施設共同研究の難しさが際立つ結果となった。
【コメント】
 筆頭著者であるTemelは自らが呼吸器内科医として勤務するマサチューセッツ総合病院で進行期肺がん患者を対象とする早期緩和ケアの無作為化比較試験を行い、その有効性を2010年にトップジャーナルであるN Engl J Med誌で発表した。早期緩和ケアの重要性を世界に印象付け、米国臨床腫瘍学会が2012年に声明を発表するほどであった。次いで2017年にJ Clin Oncol誌に発表された、進行期肺がんと消化器がんに対象を拡大した早期緩和ケアの無作為化比較試験では、消化器がん患者での有効性を示せなかった。多施設共同で行った本試験では介入のアドヒアランスは低く、有効性も示せなかった。振り返って考えると、Temelらの研究チームからの早期緩和ケアの論文はTemelが診療に関与する診療科とそれ以外で結果が異なるのかもしれない。私見ではあるが、進行期がんと診断されたすべての患者を対象とする早期緩和ケア介入の有効性は「腫瘍医が緩和ケアの専門家とどのように協働するか」が問われるのかもしれない。

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