line
Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.87
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2020  87
よもやま話
新型コロナウイルス感染拡大の今、DMAT隊員として思うこと
彦根市立病院 緩和ケア病棟
秋宗 美紀

 まず初めに、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症により亡くなられた方と、そのご家族に心よりお悔やみを申し上げます。また現在、闘病中の患者さん、ご家族にお見舞いを申し上げます。そして医療資源が限られる中で、COVID-19感染症の治療・ケアにあたられている医療関係者の皆さまに敬意を表すと共に、心からのエールを送ります。どうぞ、ご自身の心身を大切に守って下さい。
 私がDMAT隊員になったきっかけは、今から9年前の3月11日に起きた未曾有の災害、東日本大震災の医療救護班として、福島県の避難所への巡回診療に携わったことにあります。『緩和ケアを専門にしながらDMATって…秋宗は何がしたいんだ』と思う人もあったと思いますが、災害医療を学べば学ぶほど、救い得た命の次に待ち受ける苦悩に寄り添うケア、つまり緩和ケアのスキルやマインドが傷病者、被災者には必要だと痛感したのです。2012年に隊員養成研修を受け、緩和ケアと災害医療という二足の草鞋を履くこととなりました。
 そして今、新型コロナウイルスの拡大により、日本が、世界が大きく様変わりをしています。4月12日現在、国内での感染者は7,384名、死亡者は149名となり、院内感染による集団発生も各地でみられている状況です。私が勤務する病院でも、陰圧仕様の感染症病床があるため、COVID-19陽性患者の受け入れをしてきましたが、このたび滋賀県が100床のベッドを確保すると発表し、当院が県北の基幹病院に指定され、50床の感染症病棟を作ることになりました。感染対策本部では、毎晩遅くまでハード面の整備や患者さん・ご家族への対応、職員への情報発信、地域との連携など、多くの課題について検討がなされています。しかし必ずしも、現場が求めている情報が発信されているわけではなく、感染症病棟と扉一つで区切られている緩和ケア病棟の管理者としては、ゾーニングはどうするのか、共用で仕様していた介護浴の使用はどこでするのか、病棟までの入棟経路はどうなるのか…数々の疑問は増すばかりで、感染症病棟稼働に向けての院内全体の動き、各部署の動きが見えてこないのが事実です。懸命に取り組んでいる感染対策本部を非難するつもりは全くありませんが、たまたま院内で出会ったDMATメンバーとの会話で「これも一種の災害なんやから、災害対策本部を立ち上げればいいのに」「とにかくCSCAが機能してへんよね」…そうなんです!何が不足しているか、それはDMAT養成研修で何度も登場した言葉、災害医療で最も大切な『CSCA』が十分に機能していない、ということだったのです。
 C:Command&Control(命令、指令と調節、統制)、S:Safety(安全)、C:communication(伝達、意思疎通)、A:Assessment(評価)の意味ですが、災害医療などの危機的状況においては、本部を立ち上げ、迅速な情報収集と役割の明確化を行い(C)、活動場所の安全と自身の安全を確保・確認したうえで(S)、積極的にコミュニケーションをはかり(C)、本部が全体の把握と状況評価を行い(A)、次の行動につなげるという動きをします。これにより各DMATは与えられた現場で活動することができるのです。まずは自分が管理する緩和ケア病棟で、このCSCAを徹底しようとCOVID-19対策本部を立ち上げました。スタッフ間の情報共有を密に行い、スタッフの不安や疑問に耳を傾け、自分たちがやるべきこと、残されている問題を整理して、関係部署と連携を図りながら、安全な環境を守っていくための行動を続けています。
 万が一、緩和ケア病棟の患者さんに陽性反応が出たらと考えたとき、その治療を望むか望まないかという意思決定、また希望しても医療の供給が追いつかなければ、その思いに応えられないかもしれないといった、倫理的視点に立った対応と手順の整備を早急に行う必要があります。すでにCOVID-19陽性がわかり感染症病床に入院した患者さんが、頭から布団をかぶり、声を押し殺して泣いておられた、という話を病棟科長から聞きました。患者さんへの精神的ケアとあわせて、感染症病棟で勤務する医療者の感染予防はもちろんのこと、気持ちのつらさへのケアも必要となってきます。また多方面での自粛要請に伴い、生活困窮者が急増することは自殺者の増加と相関すると言われており、新型コロナウイルス拡大の二次・三次被害への対応も急がれます。課題は次々と目の前に立ちはだかりますが、私たちが人としてできること、医療者としてできることに真摯に取り組み、一日も早く日常を取り戻せるよう共に頑張りましょう!

Close