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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.87
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2020  87
Journal Club
緩和ケアを受けた循環器疾患患者の特徴と傾向
東北大学医学系研究科 緩和ケア看護学分野
升川 研人

Warraich HJ, Wolf SP, Mentz RJ, Rogers JG, Samsa G, Kamal AH.
Characteristics and Trends Among Patients With Cardiovascular Disease Referred to Palliative Care.
JAMA Netw Open. 2019 May 3;2(5):e192375. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2019.2375.


【目的】
 循環器疾患患者を含む非がん患者における緩和ケア利用が、近年、増加傾向である。早期緩和ケア介入の重要性が報告されているが、循環器疾患患者において、早期緩和ケア介入がなされているか否かなどの緩和ケア介入の実態は明らかになっていない。そこで本研究では、緩和ケアが紹介された循環器疾患患者の特徴とその傾向を明らかにすることとした。
【方法】
 2015年1月2日から2017年12月29日に、QDACT(Quality Data Collection Tool)にて収集されたデータの分析を行った。QDACTとは、アメリカで開発された緩和ケアの質の維持・向上を目的としたリアルタイムデータ収集システムである(http://www.gpcqa.org/about)。対象患者は、18歳以上、PPS(Palliative Performance Scale)の記録があり、循環器疾患に対する緩和ケア介入がなされた患者とした。主な評価項目はPPSである。PPSは、予後予測ツールの1つであり低値であるほど患者の状態が低下していることを示している。
【結果】
 緩和ケア介入患者12,914人中1,936人(15%)が循環器疾患患者であり、最終的に本研究で分析対象となった患者数は1,801人である。療養場所としては、1,269人(70.5%)が病院であり、265人(14.7%)が看護施設、214人(11.9%)が自宅、32人(1.8%)がクリニックであった(21人は不明)。緩和ケアに紹介された循環器疾患の患者数は、2015年は387人、2016年は639人、2017年は775人と増加傾向であった。循環器専門医が緩和ケアを紹介する割合が、2015年は16.5%であったが、2017年には10.5%と減少していた。
 初回介入時のPPSは全体で521人(28.9%)が低値(0-30%:常に臥床した状態)であったが、経年的な変化は認められなかった。初回介入時に中等度以上の症状を抱える全体での割合は、Well-beingが52.0%、倦怠感50.3%、食欲不振が35.7%、疼痛が19.7%であった。
【結論】
 緩和ケアを紹介された循環器疾患患者全体でのPPSの経年的な傾向は認められなかった。初回紹介時のPPS低値の割合が約3割であり、これはがんと比較すると高い割合である(がんは1割程度)。
【コメント】
 Liu AYらの報告でも循環器疾患患者の緩和ケア介入のタイミングががんと比較して遅いことが指摘された(JAMA Netw Open. 2020)。循環器専門職種が患者へ緩和ケアの話をすることや予後予測の困難感が早期緩和ケア介入を阻害する要因として考えられている。緩和ケアと循環器の専門職種が協働して、循環器疾患における緩和ケアの介入モデルとシステムを検討し、構築することが求められている。

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