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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.87
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2020  87
Journal Club
緩和ケア病棟における睡眠の質へのアロマセラピー・マッサージの効果:ランダム化比較試験
防衛医科大学校 医学教育部 看護学科
小林 成光

Kawabata N, Hata A, Aoki T.
Effect of Aromatherapy Massage on Quality of Sleep in the Palliative Care Ward: A Randomized Controlled Trial.
J Pain Symptom Manage. 2020 Jan 23. pii: S0885-3924(20)30047-6.
doi: 10.1016/j.jpainsymman.2020.01.003. [Epub ahead of print]


【目的】
 アロマセラピー・マッサージは緩和ケアの領域で一般的に実施されているが、その有効性に関するエビデンスは少ない。本研究では、緩和ケア病棟に入院している患者を対象に、1回30分のアロマセラピー・マッサージを実施することによる夜間の睡眠の質と倦怠感への効果を検証することである。
【方法】
 ランダム化比較試験は、2018年1月から2019年5月の期間で、日本の緩和ケア病棟(単施設)で行われた。緩和ケア病棟に入院したすべての患者286名のうち、適格基準(18歳以上、進行がん、同意が得られ質問への回答が可能な者を含み、予後4日以内、精油のアレルギーの既往、過去にアロマセラピーの経験がある者などを除外)を満たしたものが対象となった。介入群に割り付けられた対象者は、アロマセラピストよって午後8時〜9時の間に30分間のアロマセラピー・マッサージを受けた。コントロール群は日常の診療及びケアを受けた。方法は、対象者の手掌〜肘領域、足底〜膝領域の部位に対しブレンドされた精油(精油の香りは、参加者によってラベンダー、オレンジ、または2つのブレンドから選択)を用い、エルフラージュ・マッサージ(皮膚表面をやさしく撫でるような方法)による施術が行われた。アロマセラピー・マッサージの効果は、睡眠の質をthe Richards-Campbell Sleep Questionnaire(RCSQ)、倦怠感の程度をthe Brief Fatigue Inventory(BFI)の尺度を用いて、研究実施日(介入前)、翌日に測定された。
【結果】
 74名の対象者のうち、介入群36名、コントロール群38名が割り付けられ、最終的にそれぞれ27名、30名が分析の対象となった。その結果、両群の対象者背景に有意差は認めなかった。介入群とコントロール群では、ベースライン値を共変量とした共分散分析で、睡眠の質および倦怠感の程度に介入効果は示されなかった(RCSQ; P=0.60, BFI; 0.18, by the use of the ANCOVA)。一方で、BFIのサブスケールである「過去24時間のUsual fatigue」と「Enjoyment of life」は統計的な差は見られなかったが、コントロール群のほうがそれぞれ高い数値を示す傾向にあった(P =0.07, 0.09)。介入群のみのサブグループ解析では、アロマセラピー・マッサージ実施前後で、睡眠の質(RCSQ)、倦怠感(BFI)が維持/改善した群と悪化した群の2群にそれぞれ分け、その前後の差と対象者背景との関連性を調査した。その結果、高齢(79.3 vs. 69.8 years; P=0.03; r=0.45)と、高いperformance status(2.7 vs. 2.1; P=0.03; r=0.40)は、良質な睡眠と中程度の相関が認められ、高齢の患者(79.6 years vs. 70.3 years; P = 0.02; r=-0.47)は、倦怠感の改善と中等度の相関が認められた。また、研究実施を通して、アロマセラピー・マッサージによる重大な副作用は認めなかった。
【結論】
 緩和ケア病棟に入院している患者へのアロマセラピー・マッサージによる介入は、睡眠の質、倦怠感の程度に有効ではなかった。しかし、高齢患者や全身状態の良い患者には有効であるかもしれない。
【コメント】
緩和ケア領域におけるアロマセラピー・マッサージの介入の効果を調査した重要な研究である。本研究では、睡眠の質と倦怠感に効果は認めなかったが、サブグループ解析にて効果のある可能性がある集団が示唆された。今後は、多施設研究を考慮するとともに、これらの集団に対する介入研究を通して、実臨床に適応できる対象者を特定することが望まれる。また、介入研究において益と害のバランスは重要な要素である。そのため、アロマセラピー・マッサージによる重大な副作用が見られなかったことは重要と考える。

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