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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.87
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2020  87
Journal Club
低用量オピオイドを服用しているがん患者の突出痛の特徴
小牧市民病院 薬剤部
山本 泰大

Mercadante S, Caraceni A, Masedu F, Scipioni T, Aielli F.
Breakthrough Cancer Pain in Patients Receiving Low Doses of Opioids for Background Pain.
Oncologist. 2020 Feb;25(2):156-160. doi: 10.1634/theoncologist.2019-0542. Epub 2019 Dec 20.


【目的】
 経口モルヒネ換算オピオイド鎮痛薬投与量(OME)が60mg/日以上を投与された患者において、がん性疼痛の突出痛(BTcP)に対してフェンタニル速放製剤のROO製剤などの薬剤を用いた有効性が報告されているが、低用量のオピオイド鎮痛薬投与患者のBTcPに対する治療の有効性およびBTcPの特徴については明らかにされていない。本研究の目的はオピオイドの用量(OME 60mg /日以上or未満)の違いによるBTcPの特徴について検証することである。
【方法】
 既報(Mercadante S, et al. Pain 2016; 157: 2657-63.)のDataから、BTcPのエピソードを伴うオピオイド鎮痛薬投与患者を対象として二次解析を行った(イタリア国内32施設による前向き観察研究)。OME 60mg /日未満をL群、60mg /日以上をH群と定義して、BTcPの1日の回数・強さ・持続期間、日常生活への影響、BTcPの薬物療法および鎮痛までの時間、治療の満足度について比較した。
【結果】
 対象は3,892人(L群:n=1,418、H群:n=2,474)。H群と比較してL群の方がBTcPの回数は有意に少なく(p=.005)、疼痛強度も有意に低く(p=.0001)、より早く効果を示し(p=.024)、次回BTcPが発現するまでの期間も有意に長かった(p=.009)。L群はH群と比べてBTcPによる日常生活への影響が有意に少なく(p=.009)、L群でBTcPに対してオピオイド鎮痛薬が処方される割合も有意に低く(p=.0001)、BTcPに使用されるオピオイド鎮痛薬投与量はH群で有意に高かった。また、L群ではBTcPに対して薬物治療を受けている患者の満足度はH群よりも低かった。
【結論】
 本研究により、低用量のオピオイド鎮痛薬投与患者でのBTcPの特徴が明らかとなった。また、これらの患者に対するBTcPの治療はより低用量のオピオイド鎮痛薬で対応できる可能性が示唆された。今後、低用量のオピオイド鎮痛薬投与患者におけるBTcPの最適な治療について検証が必要と考える。
【コメント】
 早期からの症状緩和が推奨されており、臨床では低用量のオピオイド鎮痛薬投与患者も少なくない。『for the individual』、『with attention to detail』と、がん性疼痛の評価を行う上では患者個々の状況を評価することが重要であるが、定期オピオイド鎮痛薬投与量に応じて突出痛の特徴が異なる可能性があり、その内容について理解を深めることで、より患者に適した治療の提供につながると思われる。今後の日本国内でのエビデンスの蓄積が期待される。

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