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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.87
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2020  87
Journal Club
口渇の緩和ケア評価:進行疾患の患者にとって口渇に最も重要なことは何か?
国際医療福祉大学病院 薬剤部
佐藤 淳也

Fleming M, Craigs CL, Bennett MI.
Palliative care assessment of dry mouth: what matters most to patients with advanced disease?
Support Care Cancer. 2020 Mar;28(3):1121-1129. doi: 10.1007/s00520-019-04908-9. Epub 2019 Jun 14.


【目的】
 口腔乾燥症(口渇)は、進行疾患の患者において非常に一般的で重大な症状である。しかし、口渇に関する研究の不足から、その影響や標準化された評価ツールがない。研究の目的は、緩和ケア施行患者において、口渇の主観的訴えと数値的スケールの関係性を評価することである。また、口渇が食事、会話、味覚などの日々の活動に与える影響や患者の施行している症状軽減法を調査することである。
【方法】
 患者は、2015年12月から2016年11月の期間に 3つのホスピスと1つの病院で募集された。アンケートが行われ、口渇の重症度が数値評価スケール(NRS)と「なし」、「軽度」、「中程度」、「重度」からなる言語評価尺度(VRS)を用いて評価された。生活への影響については、会話、食事および味覚に対する口渇の影響について評価した。
【結果】
 135人の患者がアンケートに回答した。患者の特徴(平均)は、年齢71歳、Barthel Index 71、KPS 55であった。77%が悪性腫瘍であった。1人を除き抗コリン作用のある薬を服用していた。典型的な薬物には、オピオイド、コルチコステロイド、制吐薬、およびベンゾジアゼピンが含まれていた。すべての患者が口渇を自覚したが、特に83%は常に口渇を感じていた。口渇の半数(48%)は、口内乾燥が入院後早期に発生したと回答した。NRSによる口渇の重症度の中央値は7であり、75%がNRS≧6であった。NRSとVRSには、正の相関関係があった(p<0.001)。VRSがそれぞれ軽度、中等度、重度と答えた場合のNRS中央値は、それぞれ5、7および9であった。口渇は、それぞれ76%、61%および60%の患者において会話、食事および味覚に影響していると回答した。15%の患者は、嚥下や熟眠不良に影響していると回答した。ほぼすべての患者(97.0%)が、口渇への対処が必要であると報告し、65%が複数種の水分を口に含んでいた。品目には、飲料、お菓子、うがい薬などの非薬理学的補助剤と唾液代替スプレーやジェルなどの薬理学的補助剤の組み合わせが含まれていた。水分以外では、練り歯磨きとチューインガムが回答された。
【結論】
 研究結果は、緩和ケア施行疾患における口渇の影響が予想以上に大きいことを強調した。患者の口渇を評価する際の重要な要因には、会話、嚥下障害、睡眠などの日常活動への機能的影響を含める必要がある。
【コメント】
 口渇は、終末期がん患者の多くが自覚し、死亡間近まで苦痛を強いる。一般に口渇に対して、輸液の増加は、症状を改善しないばかりか、浮腫などの原因にもなる。唾液の不足は、口腔感染症、虫歯、口腔カンジダ症の素因にもなることは知られていたが、今回の結果から口渇の影響や会話や食事、味覚にも影響していることが検証された。口渇には、ピロカルピンの適用があるが、副作用が多く認容されないことが報告されている(Palliat Med 29(10): 967-974)。今回の調査患者らでも口渇の対策には、実際に頻繁な飲水を行っていた。これは、保湿を一時的に促すものの、持続性などの点で解決にはならない。口渇の原因が抗コリン性のある薬剤の影響も大きいことから、これらの減薬はもっとも効果的な方法かもしれない。

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