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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.86
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2020  86
Journal Club
薬物およびオピオイドが関与する過剰摂取による死亡−米国(2013年〜2017年)
北海道がんセンター 薬剤部
高田 慎也

Scholl L, Seth P, Kariisa M, Wilson N, Baldwin G.
Drug and Opioid-Involved Overdose Deaths - United States, 2013-2017.
MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2018 Jan 4;67(5152):1419-1427.
doi: 10.15585/mmwr.mm675152e1.


【背景】
アメリカではオピオイド乱用による死者が増え続けており、深刻な問題となっている。アメリカ疾病管理予防センター(CDC)が毎週報告しているMMWR(Morbidity and Mortality Weekly Report)の感染症情報においてアメリカにおける薬物乱用に関する情報が報告された。2016年のアメリカにおける薬物過剰摂取による死亡は63,632例で、2015年から21.4%増加し、2/3はオピオイドが関与していたことが報告されている。
【方法】
調査対象薬物は、すべてのオピオイド、処方箋オピオイド鎮痛薬、ヘロイン、および合成オピオイドとし、調査期間は、2013〜2017年とした。また、対象地域は、50州およびワシントンD.C.とし、調査項目は、性別、年齢、人種、ヒスパニック系出身、都市レベル、州ごとのすべてのオピオイドおよび処方オピオイドを含む薬物過剰摂取やヘロインとメサドン以外の合成オピオイドを含む薬物過剰摂取による年間死亡数および年齢調整死亡率(2016年から2017年)などとした。
【結果】
2017年の70,237例の薬物過剰摂取による死亡のうち、47,600例(67.8%)にオピオイドが関与し、2016年よりも12.0%増加した。合成オピオイドは、すべてのオピオイドが関与した過剰投与による死亡の59.8%を占め、2016年から2017年までに45.2%増加した。
それぞれの特徴を確認すると、オピオイドに関連した過剰摂取による死亡は、65歳以上で多かった(17.2%)。また、過剰摂取による死亡率はノースカロライナ州(28.6%)、オハイオ州(19.1%)で相対変化が大きかった。合成オピオイドに関連した過剰摂取による死亡は、中規模都市圏で増加率が大きかった(10万人あたり3.5人の増加)。また、過剰摂取による死亡率は、アリゾナ州(122.2%)、ノースカロライナ州(112.9%)で相対変化が大きかった。特に注目すべき結果として、ヘロイン、処方オピオイドの変化は小さいが、メサドン以外の合成麻薬の変化は性別、年齢、人種など多くケースで変化が大きい結果が得られた。
【結論】
オピオイドの過剰摂取を予防し対応するための取り組みには、よりタイムリーで包括的なサーベイランスデータが不可欠であり、処方薬や違法なオピオイド、特にIMF(違法製造フェンタニル)が関与する死亡を阻止するための予防と対応の強化が求められる。
【コメント】
オピオイド乱用による死亡事故に関する報告は長年、問題視されている。乱用に関する報告は各国から行われているが、特に、アメリカは他国に比べてオピオイド使用量も多く、乱用などの事故による死亡例が多いため、国全体で解決するべき問題と考えられ声明文も出されているほどである。しかし、日本では、オピオイドに関する抵抗感や非がん性疼痛への使用量が少ないことから、オピオイド全体の使用量はまだ、多くないため、アメリカほどの乱用事故が多くなる状況がすぐに来ることは考えにくい。また、乱用防止対策の製剤工夫された薬剤の導入がこの乱用問題を抑止することが期待されている。オピオイド先進国の状況を踏まえ、予防対策を考える上で参考となる報告である。

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