line
Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.86
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2020  86
Journal Club
ヨーロッパのICUにおける終末期医療の1999年から2016年の変化
東北大学大学院 医学系研究科 保健学専攻 緩和ケア看護学分野
田中 雄太

Sprung CL, Ricou B, Hartog CS, Maia P, Mentzelopoulos SD, Weiss M, Levin PD, Galarza L, de la Guardia V, Schefold JC, Baras M, Joynt GM, Bulow HH, Nakos G, Cerny V, Marsch S, Girbes AR, Ingels C, Miskolci O, Ledoux D, Mullick S, Bocci MG, Gjedsted J, Estebanez B, Nates JL, Lesieur O, Sreedharan R, Giannini AM, Fuciños LC, Danbury CM, Michalsen A, Soliman IW, Estella A, Avidan A.
Changes in End-of-Life Practices in European Intensive Care Units From 1999 to 2016.
JAMA. 2019 Oct 2:1-12. doi: 10.1001/jama.2019.14608. [Epub ahead of print]


【目的】
 ICUでの死亡は、生命維持療法を制限する決定の後に起こることが多い。1999-2000年にヨーロッパのICUを対象に実施されたEthicus-1研究によって、生命維持療法の実践状況が国および地域ごとに異なることが報告されている。また、近年、安楽死や医師による自殺幇助が増加し、ヨーロッパの終末期医療を取り巻く環境は変化してきている。本研究では、ヨーロッパのICUにおける終末期医療の16年間の変化を明らかにする。
【方法】
 Ethicus-1研究に参加したヨーロッパのICU22施設を対象に、前向きコホート研究を実施し比較した。
2015年9月から2016年10月の期間のうち連続した6カ月間を各施設で取り決め、その中で「死亡」または「何らかの生命維持療法の制限」があった患者を対象とした。主要評価項目は5つのカテゴリに分類された(①延命治療の差し控え、②延命治療の中止、③死にゆく過程の積極的短縮、④心肺蘇生(CPR)後死亡、⑤脳死)。副次評価項目として、患者転帰(生存または死亡)、制限された処置、などを調査した。
※死にゆく過程の積極的短縮=死亡までの時間を短縮するという特定の意図を持った行為。
【結果】
 2015-2016年の研究期間中にICUに入室した13,625人の患者のうち、1,785人(13.1%)が対象となった。対象者年齢は、1999-2000年(n=2807)と比較して、有意に高かった。(70歳 vs 67歳 P<0.001)
 1999-2000年と比較して2015-2016年は何らかの生命維持療法の制限(延命治療の差し控え/中止と死にゆく過程の積極的短縮)を実施する頻度が増加した。(差=21.4%; P<0.001)その中で、死にゆく過程の積極的短縮に関しては減少した。(差=-1.9%; P<0.001)
 一方で、CPR後死亡(差=-16.2%; P<0.001)と脳死(差=-5.2%; P<0.001)の頻度は減少した。
 また、1999-2000年に延命治療の差し控え/中止が行われた患者と比較して、2015-2016年に延命治療の差し控え/中止が行われた患者が死亡する割合は減少した。(差=-14.9%; P<0.001)。
【結論】
 ヨーロッパのICUの終末期医療において16年間の変化として、延命治療の差し控え/中止の増加、CPR後死亡と脳死の減少が明らかになった。この結果は、近年の意思決定に関する議論、終末期医療の実践に関するガイドラインや教育などの発展を反映していると考えられる。
【コメント】
 ICUにおける生命維持治療の制限の目的は、患者のQOLを低下させる可能性のある侵襲的な治療を避けることである。ICU患者は意思表示ができないことが多く、治療方針の決定において倫理的な問題を抱えやすい。法律やガイドラインが整備されてきた背景から、ヨーロッパのICUの終末期医療の変化を明らかにしたことが本研究の意義である。研究の限界として、法律などの変化が結果にどのように影響するか評価できないことが挙げられる。

Close