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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.86
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2020  86
Journal Club
慢性的な呼吸困難感に対するモルヒネ徐放製剤の
多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化比較試験
名古屋大学大学院医学系研究科 看護学専攻基礎・臨床看護学講座
佐藤 一樹

Currow D, Louw S, McCloud P, Fazekas B, Plummer J, McDonald CF, Agar M, Clark K, McCaffery N, Ekstrom MP; Australian National Palliative Care Clinical Studies Collaborative (PaCCSC).
Regular, sustained-release morphine for chronic breathlessness: a multicentre, double-blind, randomised, placebo-controlled trial.
Thorax. 2020 Jan;75(1):50-56. doi: 10.1136/thoraxjnl-2019-213681. Epub 2019 Sep 26.


【目的】
 慢性的な呼吸困難感に対する低用量のモルヒネ徐放製剤の有効性と安全性をプラセボ対照無作為化比較試験により検証する。
【方法】
 オーストラリアの呼吸器・循環器・緩和ケアの入院・外来サービス14施設で二重盲検の無作為化比較試験を行った。修正版MRC息切れスケールで2以上の呼吸困難感を有する成人を対象とした。介入群は経口モルヒネ徐放製剤20mg/日と下剤、対照群はプラセボと下剤をそれぞれ7日間服薬した。両群とも必要時にモルヒネ速放製剤2.5mg/回を1日6回まで使用可とした。主要評価項目は現在の呼吸困難感のVAS評価の前後での変化とした。
【結果】
 介入群に145名、対照群に139名が無作為に割り付けられた。主要評価項目である現在の呼吸困難評価の変化に有意差はみられなかった(変化の差-0.15 mm, 95%信頼区間 -4.59 to 4.29; p=0.95)。副次評価項目でも介入効果は認められなかった(24時間で最悪の呼吸困難感, p=0.064; 24時間で最良の呼吸困難感, p=0.207; 24時間の平均的な呼吸困難感, p=0.355; 現在の呼吸困難の不快感, p=0.338; 倦怠感, p<0.001, 介入群の方が倦怠感増悪; QOL, p=0.880; 全身状態, p=0.260)。介入群は便秘(p=0.001)と悪心・嘔吐(p=0.008)が有意に多かった。モルヒネのレスキュー使用は対照群でより多かった(介入群, 平均5.8回, 対照群, 8.7回; p=0.001)。
【結論】
 慢性的な呼吸困難感に対するモルヒネ徐放製剤の定期服用の介入効果は認められなかったが、レスキュー使用は対照群より少なかった。
【コメント】
 呼吸困難感の原因の6割がCOPD、2割弱ががんであり、非がん患者が対象の多くであった。慢性的な呼吸困難感に対するモルヒネの介入効果は示されなかったが、研究デザインの影響を考慮すると本研究だけでは結論できない。研究デザインのため、プラセボ群でもモルヒネのレスキュー使用を必要時に行えたこと、介入前の呼吸困難感が24時間の平均でVAS 42mm/100mmで症状が軽度である対象も多く改善の余地が小さかったこと、は介入効果の解釈の際に注意が必要である。

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