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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.85
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2019  85
Journal Club
高齢者は、終末期に臨床的意義の疑わしい薬をどれだけ処方継続、開始されているのか:コホート研究
東北大学大学院医学系研究科 保健学専攻緩和ケア看護学分野
佐藤 祐里

Palliat Med. 2019 Sep; 33(8): 1080-1090. doi: 10.1177/0269216319854013. Epub 2019 Jun 7.
How many older adults receive drugs of questionable clinical benefit near the end of life? A cohort study.
Morin L, Wastesson JW, Laroche ML, Fastbom J, Johnell K.


【目的】
 病期に応じて、高齢患者が治療に関する選好をしばしば変えることが知られている。予後の短い終末期高齢患者にとって利益が見込めず、臨床的意義が疑わしい薬がどの程度処方されているのかに関する先行研究では、疾患や地域など対象集団が限られていた。そこで、本研究では、高齢患者が死亡前3カ月間に、臨床的意義が疑わしい薬をどの程度処方されているのかについて検証し、知見をより一般化することを目的とした。
【方法】
 スウェーデンにおいて、緩和ケア対象となる症状が原因で2015年1月1日から同年12月31日の間に死亡した75歳以上患者を特定し、国の医療管理データを用いて、縦断的・後ろ向きコホート研究を実施した。
デルファイプロセスを通じて導出された臨床的意義の疑わしい薬に関して、対象者の調剤データを使用し、以前に臨床的意義が疑わしい薬を処方されたことがある患者の中で、死亡前3カ月間に少なくともそういった薬が処方された場合を「継続」、過去9カ月間に同じ薬で治療を受けなかった患者の中で、死亡前3カ月間に少なくとも1つそのような薬を処方されることを「開始」と定義して、調査した。
【結果】
 2015年にスウェーデンで死亡した75歳以上高齢患者64,715人のうち、対象は58,415人、平均年齢87.0歳であった。28%ががん、40%が臓器不全、32%が老衰などで死亡していた。
 死亡前3カ月で平均8.9種類の終末期高齢患者への臨床的意義が疑わしい薬(スタチン、カルシウムサプリメント、ビタミンD、ビスホスホネート、抗認知症薬など)が処方されていた。少なくとも1種類のそういった薬の処方が、32%で死亡前3カ月にも継続され、14%で死亡前3カ月に新たに開始されていた。75〜84歳、臓器不全で死亡した人、多数の慢性疾患を有する人でこれらの割合が最も高かった。
【結論】
 少なくとも半数近くの高齢患者は、死亡前3カ月間に臨床的意義が疑わしい薬を処方されていた。今後終末期の適切な薬剤処方に向けて、より一層取り組む必要がある。
【コメント】
 本研究では、病院や老人ホームで使用された薬のデータはなく、地域の調剤薬局のデータのみを使用しており過小評価されている点、また臨床的意義が疑わしい薬の定義に関する妥当性が不確かである点に考慮する必要があるが、終末期の過剰医療を再考する足掛かりとなる。
 同主著者は、がん部位別の終末期の過剰薬費用についての研究論文も公表している。今後わが国でも同様の研究を実施し、医療経済面も含めた新知見が期待される。

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