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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.85
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2019  85
Journal Club
緩和ケア病棟のがん患者における深部静脈血栓症の有病率と生存への影響
北海道がんセンター
高田 慎也

Lancet Haematol. 2019 Feb;6(2):e79-e88. doi: 10.1016/S2352-3026(18)30215-1.
Prevalence, symptom burden, and natural history of deep vein thrombosis in people with advanced cancer in specialist palliative care units (HIDDen): a prospective longitudinal observational study.
White C, Noble SIR, Watson M, Swan F, Allgar VL, Napier E, Nelson A, McAuley J, Doherty J, Lee B, Johnson MJ.


【目的】
 進行がん患者における深部静脈血栓症(以下DVT)の有病率は正確には把握されておらず、専門的緩和ケア病棟(SPCU)に入院した患者におけるDVTの有病率と予測因子を明らかにすることを目的とし本試験が計画された。
【方法】
 イギリス、ウェールズ、北アイルランドの5つのSPCU(4つのホスピス病棟と1つの緩和ケア病棟)における前向き観察研究にて実施した。対象患者は、がん患者を対象に、両側大腿静脈超音波検査を実施することで確認することとし、入院時と死亡または退院まで1週間ごとに最大3週間実施することとした。患者情報として、PS、起因する症状、DVTとの関連性が考えられている因子についてデータを収集した。また、予後が5日未満と考えられる患者は不適格とし除外した。本研究の主要評価項目は、SPCU入院後48時間以内のDVTの有病率とした。
【結果】
 2016年6月20日〜2017年10月16日に343例が登録され、平均年齢68.2歳であった。342人に超音波スキャンが行われ、放射線科医の評価によると92人においてDVTが確認され、181人は確認されず、残りの70名は評価不能や欠損であった。また、DVTの予測因子を多変量解析にて検討した結果、静脈血栓塞栓症の既往(P=0.014)、過去12週間の長期臥床状態(P=0.003)、下肢浮腫(P=0.009)はDVT発症の独立した予測因子であった。一方で、血清アルブミン濃度(P=0.43)、抗凝固による血栓予防(P=0.17)、抗血栓塞栓ストッキング(P=0.32)は有意差を認めなかった。DVTの有無で全生存期間を比較した結果、両群に差は認められなかった(ハザード比:1.102、P=0.45)。
【結論】
 今回のデータは、進行がんのSPCUに入院し、5日以内に死亡すると予想されない患者の約3分の1がDVTを患っていたことが示され、進行がんで入院する患者のDVTは、血栓予防、生存、下肢浮腫などとの関連性は認められなかった。PSが低下している患者におけるSPCUの血栓予防は、ほぼ利益がないことを示した。
【コメント】
 緩和ケアにおけるDVT発症のデータは報告少なく、今回の検証結果は、緩和ケア治療中のDVTに対する考え方を新たに示すものである。従来、有効と考えられていた抗血栓塞栓ストッキングや抗凝固剤の使用などが否定され、最終的な生存期間延長への寄与もないことが示された貴重な報告と考える。現在、腫瘍学の中で注目されている領域に腫瘍循環器があり、多角的専門家の介入の必要性を感じる論文である。

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