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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.85
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2019  85
Journal Club
ICU入床中患者のせん妄予防に対する、柔軟な家族面会の有効性について
−ICU面会時間無作為化比較試験−
広島大学大学院医系科学研究科 老年看護・がん看護開発学
角甲 純

JAMA. 2019 Jul 16;322(3):216-228. doi: 10.1001/jama.2019.8766.
Effect of Flexible Family Visitation on Delirium Among Patients in the Intensive Care Unit: The ICU Visits Randomized Clinical Trial.
Rosa RG, Falavigna M, da Silva DB, Sganzerla D, Santos MMS, Kochhann R, de Moura RM, Eugenio CS, Haack TDSR, Barbosa MG, Robinson CC, Schneider D, de Oliveira DM, Jeffman RW, Cavalcanti AB, Machado FR, Azevedo LCP, Salluh JIF, Pellegrini JAS, Moraes RB, Foernges RB, Torelly AP, Ayres LO, Duarte PAD, Lovato WJ, Sampaio PHS, de Oliveira Junior LC, Paranhos JLDR, Dantas ADS, de Brito PIPGG, Paulo EAP, Gallindo MAC, Pilau J, Valentim HM, Meira Teles JM, Nobre V, Birriel DC, Correa E Castro L, Specht AM, Medeiros GS, Tonietto TF, Mesquita EC, da Silva NB, Korte JE, Hammes LS, Giannini A, Bozza FA, Teixeira C,; ICU Visits Study Group Investigators and the Brazilian Research in Intensive Care Network (BRICNet).


【目的】
 ICUにおける、柔軟な家族面会時間の設定が、せん妄の発症率を低下させるかを検証することである。
【方法】
 ブラジルの成人ICU36施設に入院している患者とその家族、また勤務する臨床医を対象に、施設ごとに無作為化して実施する、クラスタークロスオーバー無作為化比較試験を行った。介入は、臨床医が提供する家族教育を含む柔軟な面会時間(12時間以下/日)の設定と、通常の面会時間(4.5時間以下/日)の設定であり、19施設が先に柔軟な面会時間の設定から開始され、17施設は通常の面会時間の設定から開始された。調査期間は2017年4月〜2018年6月であり、2018年7月までフォローアップ調査が行われた。主要評価項目は、CAM-ICUを用いて評価したICU滞在中のせん妄発症率であり、副次評価項目は、患者側として、毎日のせん妄リスク、感染症の発症、1週間のうち呼吸器の装着なく過ごせた日数、ICU滞在日数、病院死亡率を測定し、家族側としてHADSを用いた不安と抑うつのスコアと満足度、臨床医側ではCCFNIを用いたバーンアウトスコアについて測定された。
【結果】
 患者1,685名、家族1,295名、臨床医826名が登録され、1,685名(100%)の患者(平均年齢58.5歳、女性47.2%)、1,060名(81.8%)の家族(平均年齢45.2歳、女性70.3%)、737名(89.2%)の臨床医が(平均年齢35.5歳、女性72.9%)が試験を完遂した。一日の平均面会時間は、柔軟な面会時間の設定群で有意に高かった(4.8時間 vs 1.4時間;調整差3.4時間[95%信頼区間(CI), 2.8〜3.9時間]; P <.001)。ICU滞在中のせん妄発症率は、柔軟な面会時間の設定群と通常の面会時間の設定群で有意差は見られなかった(18.9% vs 20.1%;調整差-1.7%[95%CI, -6.1〜2.7%]; P < .44)。副次評価項目では、家族の不安(6.0 vs 7.0; 調整差-1.6[95%CI, -2.3〜-0.9]P <.001)、抑うつ(4.0 vs 5.0;調整差-1.2[95%CI,-2.0〜-0.4]; P =.003)、満足度(146.1 vs 132.6; 調整差13.5[95%CI, 10.4〜16.7];P <.001)にて、柔軟な面会時間の設定群で有意に良好であったが、その他の項目では有意差はみられなかった。
【結論】
 ICU入床中の患者では、通常の面会時間の設定と比較して、柔軟な面会時間の設定は、せん妄の発症率を有意に低下させることはなかった。
【コメント】
 筆者のRosaらは、長きにわたってICUにおける面会時間とせん妄の発症率を調査しており、2017年には単施設の介入ながら、柔軟な面会時間はせん妄の発症率を有意に低下させると報告(Crit Care Med. 2017 Oct; 45(10): 1660-1667)していたので、今回の結果には驚いた。せん妄の発症については、家族の負担が大きいことが報告されているため、今回の調査で家族側に良好な結果が得られたことは、重要であると考える。

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