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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.85
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2019  85
Journal Club
Pain management index(PMI)は、がん患者の除痛への希望を反映するか?
静岡県立静岡がんセンター
佐藤 淳也

Support Care Cancer. 2019 Jul 9. doi: 10.1007/s00520-019-04981-0.
Pain management index (PMI)-does it reflect cancer patients' wish for focus on pain?
Thronas M, Balstad TR, Brunelli C, Lohre ET, Klepstad P, Vagnildhaug OM, Kaasa S, Knudsen AK, Solheim TS.


【目的】
 Pain management index(PMI)は、疼痛強度と使用している鎮痛薬の種類から除痛法の適正を数値評価したものである。本研究は、PMIと患者の除痛への希望との関連性を後方視的に調査した。
【方法】
 対象は、ノルウェーの単一施設におけるがん患者であった。調査項目としては、PMIの指標である平均的な疼痛の程度(Numerical rating scale;NRS)とWHO除痛ラダーで分類された鎮痛薬カテゴリー(ステップ1;非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)またはアセトアミノフェン、ステップ2;弱オピオイド[コデインまたはトラマドール])、ステップ3;モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル)であった。疼痛強度は、NRS=0, 1-3, 4-7および8-10をそれぞれNo pain, Mild pain, Moderate painおよびSevere painの4段階に分類した。PMI=0とは、Mild painにおけるNSAIDsあるいはアセトアミノフェンの使用、Moderate painにおける弱オピオイドの使用、Severe painにおける強オピオイドの使用を示す。これらより除痛法が過小な場合は、PMIが負となる。さらに患者には、「医師が貴方の治療により関心をもつことを希望するか」という質問を行った。
【結果】
 調査には、433名が登録され、鎮痛剤の使用歴のある187人について解析された。患者の53%が負のPMIスコアであった。特に、乳がんの患者においては、PMIスコアが負となるオッズが高かった(OR=4.2、95%CI 1.3-13.5)。一方、低い全身状態(Karnofsky performance status≦50)は、PMIスコアが負となるオッズが低かった(OR=0.14、95%CI 0.03-0.65)。PMIスコアが負であった患者の22%が「医師に自分の疼痛に関心をもって欲しい」と希望したが、PMIスコアがプラスの患者の13%に比べ統計的に有意に多いものではなかった。
【結論】
 負のPMIは、比較的高い頻度で観察されたが、その改善を希望する患者は、わずか5名に1名であった。今回の結果は、がん性疼痛の治療不足の尺度としてのPMIに疑問を投げかけるものであった。
【コメント】
 PMIは、痛みの程度と使用すべき薬剤を的確に示した指標であり、WHO除痛ラダーに基づいた指針である。著者らは、研究の限界としてがん性疼痛以外の痛みをもつ患者の存在などの調査対象の偏在性やPMIが使用薬剤の投与量を考慮していない不完全性、WHO除痛ラダーのステップ2の概念が再考される可能性などを示している。しかし、痛みが強ければ、患者はより強い除痛を希望し、投与量の増量や薬理学的に強い薬剤へのスイッチングを行うべきという医療者の概念は、冷静に考える必要があるかもしれない。最近、Personal pain goal(0-10のどのレベルなら快適に過ごせるか?)という考えもあり、患者の求める痛みの程度は、3程度であることが報告されている(Cancer 2012; 118: 3869-77)。今回の結果も同様に、患者の希望に応じた除痛が大切であることを改めて感じる論文である。

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