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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.85
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2019  85
Journal Club
高齢がん患者に対する死亡前の化学療法の経年変化の傾向
名古屋大学大学院医学系研究科 看護学専攻基礎・臨床看護学講座
佐藤 一樹

J Clin Oncol. 2019 Jul 10;37(20):1721-1731. doi: 10.1200/JCO.18.02067. Epub 2019 May 29.
Rising and Falling Trends in the Use of Chemotherapy and Targeted Therapy Near the End of Life in Older Patients With Cancer.
Fang P, Jagsi R, He W, Lei X, Campbell EG, Giordano SH, Smith GL.


【目的】
 終末期の化学療法は過剰ながん医療とされ、死亡前14日間の抗癌剤投与は終末期がん医療の質指標としてベンチマークされている。殺細胞性抗癌剤と分子標的治療薬に分け、死亡前の抗癌剤投与の経年変化を明らかにすることを目的とした。
【方法】
 65歳以上の高齢がん死亡者を対象に、米国のがん登録とMedicareデータベースを用いて2007〜2013年の死亡前6カ月間の抗癌剤投与を調べた。主要評価項目を死亡前14日間の抗癌剤投与とし、経年変化の傾向を分析した。
【結果】
 乳がん19,887名、肺がん79,613名、大腸がん29,844名、前立腺がん17,910名の死亡者が抽出された。
 殺細胞性抗癌剤は、死亡前14日間の投与が2007〜2013年で6.7%から4.9%に減少し(Ptrend<.001; 差=-1.8%)、死亡前2カ月以内の投与でも減少傾向であった(Ptrend<.001; 差=-1.3%)。一方、死亡前4〜6カ月間の投与は増加した(Ptrend≦.04; 差=+0.7〜1.7%)。分子標的治療薬は、2007〜2013年で有意な変化はみられず、2013年では死亡前14日間の投与が1.2%、1カ月間で3.6%、6カ月間で13.2%であった。
 マルチレベル解析の結果、死亡前14日間の抗癌剤投与の変動の5.19%が医師要因により説明された。
【結論】
 高齢がん患者に対する死亡前14日間の殺細胞性の抗癌剤投与は減少傾向であり、5%以下まで低下した。この指標は医師の包括的なベンチマークになると考えられる。この経年変化の傾向から、現在のがん対策が終末期がん医療の質向上に寄与していることを示唆する。
【コメント】
 がん終末期医療の質指標として、死亡前14日間の抗癌剤投与のほかに、死亡前30日間のICU利用、ER利用、入院2回以上、新規抗癌剤レジメン開始が提案され、米国やカナダで全国や州規模での評価がされてきた。米国での疫学調査結果はこれまで2000年頃のデータまでしか発表されておらず、本研究のデータは米国での疫学データの更新となる。また、本論文では詳細な関連要因の分析も行われている。
 分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場によりがん治療はより複雑化しているが、少なくとも殺細胞性の抗癌剤に関しては死亡前の投与はACPにより控えられる方向に推移している。同様の指標での実態調査はわが国でも取り組まれている。(PMID=30107588など)

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