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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.84
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2019  84
よもやま話
最近思うこと
滋賀県立総合病院 薬剤部 がん専門薬剤師
大辻 貴司

 私の1日は治験薬の温度管理から始まります。大型冷蔵庫の中で出勤時の体熱を冷やすことができるので、夏場は特に心地いいです。朝礼後、午前中は抗がん薬の調製や外来の服薬指導を行い、午後は調剤や抗がん薬レジメン監査、治験業務などを行っています。
 外来の服薬指導では、主に「がん患者管理指導料ハ」の算定条件を満たすため、院外処方を含めて抗がん薬新規導入時や変更時の説明、さらに副作用のモニタリングまで幅広く行います。患者さんからの訴えや医師からの相談に対しては、限られた時間の中で根拠となるような論文や適正使用ガイド、添付文書などを参考に最も適した内容にまとめ回答・提案をしています。私のモットーは《face-to-face》です。回答は電話やメールではなく、患者さんや医師に必ず会って、直接行うようにしています。うまくいかないこともありますが、患者さんの笑顔に逆に癒されたり力をいただきながら、薬剤師の役割について自問自答する日々が続いています。
 私が勤務する滋賀県立総合病院は昭和45年(1970年)に開設し、現在30診療科535床。都道府県がん診療連携拠点病院として平成21年(2009年)からその役割を担っています。緩和ケア病棟は平成15年(2003年)に開設されました。現在、薬剤師は21名、二交代制のため全員が調剤・調製、持参薬鑑別、服薬指導、チーム医療への参画など、1日に何役もの業務をこなしています。病棟薬剤業務実施加算を取得し、病棟業務での算定増加について取り組んでいるところです。
 この過酷な状況の中、組織マネジメントも担う私は、近頃気になることがあります。緩和ケアチームにおいて薬剤師だからこそできること、しなければならないことは何だろう、ということです。緩和ケアチームは、多職種で患者さんを多角的にみるというメリットがあります。その中で薬剤師は専門的な知見を求められます。医師・看護師の「すき間作業潤滑油」や「補完する役割」ができるフットワークの軽い薬剤師としてだけでなく、専門職としての能力をどう発揮すればいいのだろうと自問自答する毎日です。いつも新しい情報にアンテナを張り、経験を積み重ねないとついていくことができず、常に走っています。限りある知識と経験を振り絞って患者さんのもとへ出陣し、そして自分自身と向き合うのですが、結果、患者さんに助けられているのです。
 現在「緩和ケア診療加算」は緩和ケアチームとしての評価であり、薬剤師はチームの一員ですが、活動を直接評価される診療報酬体系ではありません。また、緩和ケア病棟は一般病棟と違い「薬剤管理指導料」や「病棟薬剤業務実施加算」が対象外となるため、薬剤師の職能を活かせる場面があるにもかかわらず、人的コストを考えると増員してまでの対応は難しくなります。自治体病院とはいえ、病院事業としての自立性や継続性を求められる以上やむを得ない面もあります。病院薬剤師の活動に対し診療報酬上の評価が未だ十分でないことから、実際に担っている役割や期待されている役割に比べて薬剤師数が少ないという現実に繋がっていると思います。
 近年、様々なチーム医療や施設基準の中で薬剤師の位置づけが重要になってきていることは歓迎しますが、まずは薬剤師がその職能をもって、直接患者に向き合うことに対する診療報酬上の評価を充実させることが必要です。診療報酬上により評価されることで、病院薬剤師の増員が図れ、結果として職能の発揮、医療の質の向上、患者さんの利益、という好循環が生まれるのではないでしょうか。
 振り返れば、一般病棟では先輩方の努力により昭和63年(1988年)に「入院調剤技術基本料100点」が導入され、平成の30年間を通じて「薬剤管理指導料380点」になるまで薬剤師の病棟業務の評価が高まってきたという歴史があります。
 いま、緩和ケアの領域においても一般社団法人日本緩和医療薬学会から緩和薬物療法認定薬剤師を誕生させるなど、常に研究マインドをもって薬剤師の専門性を高めようと積極的に取り組まれています。こうした動きを個々のスキルの向上のみならず、病院における薬剤師の役割の明確化と、その役割を果たせるだけの診療報酬上の評価に繋げられるよう取り組んでいかなければなりません。
 緩和ケアだからこその、ロボットやAI(人工知能)なんぞにはできない、薬剤師に期待される本当の仕事があるはず。さぁ誇りを持って頑張るぞ!
 ちょっと熱くなりすぎたので、冷蔵庫で頭を冷やしてから帰宅することにします。。。

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