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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.84
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2019  84
Journal Club
電子カルテデータからせん妄ハイリスク患者を同定する機械学習モデルの開発と
妥当性の検証
東北大学医学系研究科緩和ケア看護学分野
升川 研人

Wong A, Young AT, Liang AS, Gonzales R, Douglas VC, Hadley D.
Development and Validation of an Electronic Health Record-Based Machine Learning Model to Estimate Delirium Risk in Newly Hospitalized Patients Without Known Cognitive Impairment.
JAMA Netw Open. 2018 Aug 3;1(4):e181018. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2018.1018.


【目的】
せん妄は、アウトカムや医療費などに悪影響を与えることが明らかになっている。せん妄ハイリスク患者を入院時に同定し予防策を講じるための評価ツールは開発されているが、入院時の顕在的なリスク要因(年齢や見当識障害の有無、疾患の重症度など)を捉えることに留まっている。明確なリスク要因がみられないが今後せん妄ハイリスクになりうる(潜在的なリスク要因を持った)患者を同定することも重要であるとされている。そこで本研究の目的は、入院24時間以内の電子カルテ上の記録から、せん妄ハイリスク患者をより正確に予測する機械学習モデルの開発とその妥当性の検証を行うことである。
【方法】
研究デザインは、後ろ向きコホート研究である。UCSFメディカルセンターで、18,233名分の入院後24時間の電子カルテ記録と入院後12時間毎にせん妄発症の有無を判断するために測定しているNu-DESCとCAM-ICUの数値を収集した。入院時に、すでにせん妄を発症していたり、認知機能障害のある患者は除外された。796の変数を収集し、それらを5つの機械学習モデルに投入し、せん妄ハイリスク群を同定するモデルを開発した。
【結果】
UCSFメディカルセンターにて、日常臨床で使用しているせん妄ハイリスク群同定ツールのAUC(1に近いほど判別能が高いことを示す)は0.678であったが、今回の機械学習で得られたモデルのAUCは0.848〜0.855と高い値であった。最終的にモデルが採用した変数の数は、114〜588であった。特にせん妄ハイリスクを同定する上で重要であるとされた代表的な変数は、「言葉の応答(見当識障害あり)」、「年齢」、「転院」、「体温」などであった。
【結論】
機械学習を用いることで、入院後24時間の電子カルテデータからせん妄リスクを予測することができた。このモデルにより、せん妄予防対策の対象患者を医療者の負担を少なく、より正確に同定することにつながるかもしれない。
【コメント】
日々ルーチンで測定している変数の違いによっては結果が異なったことも考えられる。しかし、電子カルテ上の記録からせん妄ハイリスク群を自動的かつ高精度に同定することができれば、医療者の負担軽減にもつながり、大変有用であると考える。本モデルの感度をあらかじめ高く設定した場合、実際に予防策が必要でない患者に対してもせん妄ハイリスクと診断する可能性があることに注意が必要である。そのため医療者は、本モデルで出力された結果を参考に再度評価・判断する能力が必要である。

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