line
Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.84
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2019  84
Journal Club
化学療法も放射線療法も受けていない進行がん患者の悪心嘔吐に対する
オランザピンの制吐効果:オープンラベル多施設共同研究
静岡県立静岡がんセンター
佐藤 淳也

Harder S, Groenvold M, Isaksen J, Sigaard J, Frandsen KB, Neergaard MA, Mondrup L, Herrstedt J.
Antiemetic use of olanzapine in patients with advanced cancer: results from an open-label multicenter study.
Support Care Cancer. 2019 Aug;27(8):2849-2856. doi: 10.1007/s00520-018-4593-3. Epub 2018 Dec 14.


【目的】
非定型抗精神病薬であるオランザピンは、化学療法誘発性の悪心嘔吐に対する有効性が示されている。しかし、化学療法や放射線療法の催吐原因のないがん患者の悪心嘔吐に対する有効性は不明である。本論文は、このような患者におけるオランザピンの有効性と安全性を前向きに試験した多施設共同研究の報告である。
【方法】
対象は、化学療法または放射線療法を受けていないにも関わらず過去24時間以内に少なくとも「中等度」以上の悪心および/または1回の嘔吐を伴う進行がん患者とした。患者に5日間毎日10mgのオランザピンを投与した(初日皮下、翌日から4日間経口投与)。悪心嘔吐をEORTC QLQ-C15-PALアンケートおよび副作用をCTCAE version 4.0を用いて7日間評価した。
【結果】
4施設から40人の患者が含まれ、24時間後に全員が評価可能であった。36人(90%)の患者が症状の改善を経験した。ベースライン時の平均悪心嘔吐スコア(0?100)は66で、24時間後と7日後にそれぞれ21と24に改善された。3人の患者で有害事象(疲労、めまい、および/または鎮静)のためにオランザピンの投与量を5mgに減少した。
【結論】
オランザピンは、進行がん患者の制吐薬として効果的で忍容性がある。将来の研究では、低用量(5または2.5 mg)を用いた無作為化比較試験を行うべきであろう。
【コメント】
本研究は、化学療法や放射線療法の催吐原因を持たない進行がん患者が自覚する難治的な悪心嘔吐に対するオランザピンの有効性を示している。対象患者の87%が既治療としてドンペリドン、ハロペリドール、メトクロプラミド、ステロイド、オンダンセトロンなどを使用していた。研究結果は、これら既治療に無効な患者に対してオランザピンの投与が有効である根拠となるであろう。ただし、プラセボと比較していないこと、10mgという用量の日本人における忍容性、初日が筋注(経口剤と注射剤の生物学的利用能は、ほぼ同等であるが、注射剤の最高血中濃度は経口剤より5倍高い)という点は、日本人に対して適用する際に考慮すべき点である。

Close