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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.84
日本緩和医療学会ニューズレター
Aug 2019  84
巻頭言
BSC(Best Supportive Care)はBestな表現なのか?
佐賀県医療センター好生館
小杉 寿文

 緩和ケアチームや緩和ケア病棟に紹介される時の紹介状の表現に、「化学療法を継続してきましたがPDとなり、BSCを選択されましたので、よろしくお願いします」と書かれているのをよく目にします。
早期からの緩和ケアのエビデンスがあり、化学療法中の患者さんのサポーティブケアが大切にされ、一般社団法人日本がんサポーティブケア学会が設立される今日この頃ですが、Best Supportive Careの意味するところは、「化学療法が終了した状態」を表しています。敢えて言うならば、OSC(Only Supportive Care(without Cure))でしょうか?なんだかなあ、という気持ちになるのは私だけでしょうか?
暇に任せて、一般社団法人日本癌治療学会のHPを検索してみました。各種癌治療のガイドラインが掲載されています。StageWのところに注目しますと、手術や化学療法など積極的治療をしないという意味で経過観察や対症療法などとともにBest Supportive Careや緩和治療と書かれています。全てを確認した訳ではありませんが、対症療法が3つ、緩和ケアが1つ、緩和医療が4つ、BSCが10もありました。それぞれ担当する専門の学会や研究会が作成されているガイドラインです。BSCと表現されているのもあれば、経過観察という言葉を用いて、微妙にこの部分に対する配慮を感じるものもあります。実は、海外に目を向けますと、ESMO(欧州臨床腫瘍学会)もNCCN(National Comprehensive Cancer Network)にも普通にBSCと記載されています。これをみるとBSCという言葉は正しいのではないかと思いがちですが、どう考えてもBestなサポートは化学療法中からするべきでしょう。さらに、化学療法ができないから緩和ケアまたは緩和医療とはっきり記載されているのは、どう考えても納得がいきません。
最近になってWHOの緩和ケアの定義に対する定訳が定められました。日本国内の緩和ケアに関する18の学会や研究会が共同で策定しました。微妙なニュアンスを統一したのです。それだけ、「言葉」を大切にする必要があるのだと思います。
患者さんや家族もガイドラインを見る時代です。そこに、緩和ケアや緩和医療、BSCという言葉が、もう化学療法もできないという意味で、その分野で日本を代表する学会が作ったガイドラインに掲載されているのです。
我々は、専門学会としての意見を発信する必要があるのではないでしょうか。一般市民への啓発とともに、オンコロジストに対してももっと啓発が必要だと思わずにいられません。

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