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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.83
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2019  83
Journal Club
進行がん患者に対するSpiritual Pain Assessment Sheet(SpiPas)を
活用したスピリチュアルケアの有効性:予備的非無作為化比較試験
京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻
市原 香織

Ichihara K, Ouchi S, Okayama S, Kinoshita F, Miyashita M, Morita T, Tamura K. Effectiveness of spiritual care using spiritual pain assessment sheet for advanced cancer patients: A pilot non-randomized controlled trial. Palliat Support Care. 2019 Feb;17(1):46-53. doi: 10.1017/S1478951518000901. Epub 2019 Jan 26.


【目的】
 SpiPasは、医療従事者が日常ケアのなかで簡便に使用できるアセスメントツールとして開発され、SpiPasを用いた看護師教育プログラムでは、看護実践への効果が検証された。本研究の目的は、SpiPasを用いたスピリチュアルケアが、進行がん患者のスピリチュアルな安寧にもたらす効果を検証するために予備的な知見を得ることである。
【方法】
 2015年1?7月に看護師教育プログラム修了者が勤務する血液腫瘍内科1病棟と緩和ケア2病棟で非無作為化比較試験を実施した。SpiPasによる介入は、スクリーニング4項目と特定のスピリチュアルペイン14項目をインタビュー形式で尋ね、ケアの手引きを用いてケアを提供する。適格基準を満たす協力者54名のうち、同意を得た46名を介入群22名、通常ケア群24名に時期を分けて割付、ベースライン、2週後、3週後のFACIT-Sp、HADS、CoQoLoを測定した。主要評価項目は、FACIT-Spであり、各スコアの3週間の平均値は記述統計、2週間の群間の変化量を解析した。
【結果】
 3週間後の測定を33名(72%)、2週間後の測定を23名(50%)が完遂した。脱落理由は、死亡、状態悪化などだった。3週間の経時的な各スコアの変化は、介入群のFACIT-Sp、HADS、CoQoLoは維持または改善傾向、通常ケア群では悪化傾向を示した。2週間の各スコアの変化量の群間差は、FACIT-SpとHADSでは有意な変化があり(3.65, 14.41, p<0.01; ?11.20, ?1.09, p=0.02)、CoQoLoは有意な変化がなかった。
【結論】
 介入群のFACIT-Spが維持され、対照群で悪化したことは、SpiPasを活用した介入が進行がん患者のスピリチュアルな安寧に効果をもたらした可能性がある。本調査では、患者の漸減を最小限にするため、入院から2週間で測定を完遂し、同様の効果を示すことが望まれる。
【コメント】
 近年、医療のなかでスピリチュアル・実存的な苦痛に対する介入研究が増加している。SpiPasは、開発過程において実施可能性を確認し、適切に用いるための看護師教育を経て、段階的に患者への適応を検討した介入であることが注目すべきところである。予備調査では、患者の非無作為化、漸減率、研究者自身の介入等の研究の限界があるが、本調査を通して進行がん患者のスピリチュアルの安寧に寄与することが期待される。

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