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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.83
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2019  83
Journal Club
終末期患者の口腔ケア:口腔状態を改善/症状マネジメントを強化するための評価
防衛医科大学校 医学教育部 看護学科
小林 成光

Magnani C, Mastroianni C, Giannarelli D, Stefanelli MC, Di Cienzo V, Valerioti T, Casale G. Oral Hygiene Care in Patients With Advanced Disease: An Essential Measure to Improve Oral Cavity Conditions and Symptom Management. Am J Hosp Palliat Care. 2019 Feb 12:1049909119829411. doi: 10.1177/1049909119829411.


【目的】
 終末期患者は、様々な口腔内の問題を抱えており、それらは日常生活に悪影響をおよぼしている。口腔内の衛生を保つことでそのリスクは軽減するかもしれないが、医師および看護師は、口腔内の衛生が優先事項であると認識しておらず、あまり注意が向けられていない。本研究では、終末期患者の口腔内の状態を観察し、口腔ケアによる影響を評価することを目的とした。
【方法】
 前向き観察研究は、2016年6月から2017年7月の期間で、イタリアの緩和ケアセンターで行われた。ホスピスに入院したすべての患者415名のうち、適格基準(18歳以上、頭頚部がんを除くすべての疾患、口腔内のセルフケアができない、など)を満たした者が対象となった。対象者は、登録後に看護師から口腔ケアを受け、口腔ケアの前(T0)、口腔ケアの10分後(T1)、T0の3日後(T2)の3時点で口腔内の状態や口腔内の症状、快適さについて評価された。The Oral Assessment Guide score(OAG)は口腔内の状態、The Numerical Rating Scale(NRS)は口腔内の症状の評価のために使用された。口腔ケアの方法は、患者の状態に合わせて看護師の判断で選択された。
【結果】
 同意が得られた75名が対象となった。1回の口腔ケアに要した時間は平均5.3分であり、1日に実施した回数は、2回(50%)、1回(44.1%)であった。口腔ケアの方法は、クロルヘキシジン0.12%を浸した布(56.0%)、歯ブラシと歯磨き粉(40.0%)、重曹水を浸したガーゼ(4.0%)が選択された。その結果、OAGの平均総得点は、T0の時点(12.2±2.6)と比較して、T2の時点(10.6±2.4)では減少し(p<0.001)、味覚異常および口渇の症状は、改善した(p=0.02, p=0.03)。また、T1の時点で、対象者の86.6%は口腔内が快適であると回答した。
【結論】
 口腔ケアは、終末期患者の口腔内の状態および苦痛症状を改善し、口腔内の快適さをもたらすことが明らかとなった。終末期患者に対して、口腔内を評価し、口腔ケアを提供することは重要である。
【コメント】
 終末期患者に対する看護師による口腔ケアの影響を調査した重要な研究である。一方で、対照群を設定していない研究であり、結果の解釈には限界がある。また、終末期患者を対象にしている性質上、T2の時点で、病状悪化を理由に7名の対象者が脱落しており、全身状態が異なる様々な要因を持つ対象者が含まれた可能性がある。さらに、口腔ケアの方法は、患者の状況に合わせて看護師の判断で選択されており、ケア方法による効果の違いに関しては検討されていない。今後は、対象者の背景を考慮するとともに、終末期患者に対し、より有効な口腔ケアを提供するためにも、口腔ケアの方法毎に、その有効性を検証していく必要がある。

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