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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.83
日本緩和医療学会ニューズレター
May 2019  83
Journal Club
化学療法による末梢神経障害を有するがんサバイバーのため運動療法の有効性
静岡県立静岡がんセンター 薬剤部
佐藤 淳也

McCrary JM, Goldstein D, Sandler CX, Barry BK, Marthick M, Timmins HC, Li T, Horvath L, Grimison P, Park SB.Exercise-based rehabilitation for cancer survivors with chemotherapy-induced peripheral neuropathy.Support Care Cancer. 2019 Feb 12. doi: 10.1007/s00520-019-04680-w.


【目的】
 化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)は、がんサバイバーの40%が有病し、機能障害や転倒発生率の増加と関連している。CIPNに対して、現在推奨されている治療戦略は限られている。本研究では、CIPN症状とそれに関連する機能障害、そして神経生理学的パラメータに対する運動療法の有効性を評価した。
【方法】
 運動療法の介入は、週3回のセッション(各20分の筋力トレーニング、バランストレーニングおよび有酸素運動、計60分)を8週間継続した。介入の評価は、ベースライン、運動療法介入前、介入後の3ポイントにおいて、客観的評価(TNSc; 0-24スケール)と患者報告(EORTC CIPN-20; 0-100スケール)、6分間歩行テスト、立位バランス、QOL(SF-36; 0-100スケール)、神経生理学的検査(脛骨神経の運動活動電位および腓腹神経の感覚活動電位測定)により行われた。
【結果】
 対象患者は、CIPN症状を有する29人のがんサバイバーであった。CIPNの原因薬剤は、パクリタキセルとオキサリプラチンが7割を占めた。運動療法介入のアドヒアランスは、83%であった。運動療法介入後は、介入前に比べTNScスコアおよびCIPN-20スコアが有意に低下した(平均±標準偏差; 7.0±0.7→5.3±0.5, p=0.001
および25.4±3.0→18.5±2.3, p<0.001)また、6分間歩行テストおよびSF-36も同様に有意に改善した
(452.1±17.4→469.9±20.5, p=0.02および60.5±3.7→69.1±3.6、p=0.003)。神経生理学的検査による感覚または運動神経生理学的パラメータに統計学的有意な変化は観察されなかった。
【結論】
 この研究は、治療後のコホートにおいてCIPNを有するがんサバイバーに対して、運動療法が症状を軽減させるために有効であることを示した。
【コメント】
 CIPNは、タキサンおよびプラチナ抗がん剤投与後の患者が年単位で症状を持続する副作用である。CIPNを有する患者は、治療後においても日常生活の活動性が低下し、総じてQOLが低下することが報告されている(Support Care Cancer. 2012; 20: 3355-64.)。これらCIPNに有効である薬剤としては、デュロキセチンやプレガバリン、三環系抗うつ薬があるにすぎない(J Clin Oncol. 2014; 32: 1941-67.)。しかし、これら薬剤の有効性は十分ではなく、眠気などの副作用が多いことも経験される。本研究による運動療法は、自覚的および他覚的なCIPN症状を改善するほか、QOL指標も改善している。アドヒアランスは、総じて80%が維持されたが、自宅では、67%に低下している。医療者は、がんサバイバーに対して運動を勧めるとともにこれを維持するモチベーションを定期的に補完することが重要であろう。

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