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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.82
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2019  82
委員会活動報告
安全・感染委員会活動報告
緩和ケア病棟における結核の発生と結核対策についての調査報告
安全・感染委員会
委員長  柏木 秀行

 結核罹患率はこの10年減少傾向にありますが、日本の結核罹患率は、先進国の中では唯一の中蔓延国です。緩和ケア病棟に入院される患者さんは、化学療法や放射線治療後であり、低栄養の状態の上に副腎皮質ステロイドの使用例も多く、結核リスクが高い状態です。そこで、緩和ケア病棟における結核の実態に関する全国調査として、2018年4月に特定非営利活動法人日本ホスピス緩和ケア協会正会員の緩和ケア病棟担当医師を対象としたアンケート調査を行ないました。その結果についてご報告いたします。
 アンケートは340施設に送付し、回答率64.1%でした。回答施設の病床数は500床以上が51施設、200〜500床未満が78施設、20〜200床未満が74施設、20床以下が4施設でした。緩和ケア病棟における結核発生状況は、結核診断施設13施設(6%)、14事例であり、肺結核は12例でした。2006年に大学病院、国立病院機構、その他を対象とした結核院内感染に関するアンケート調査1)に比べ、少ない発生数でした。診断のきっかけとなる症状は咳7例、痰7例、発熱7例、食欲不振1例、呼吸困難1例、未回答1例であり、診断方法は胸部X線8例、塗沫抗酸菌検査12例、IGRA3例、胸部CT3例、未回答1例でした(複数回答)。原発癌は肺癌5例、胃癌2例、甲状腺髄様癌、膀胱癌、悪性リンパ腫、大腸癌、食道がん、前立腺癌がそれぞれ1例でした(未回答1例)。肺癌と胃癌は結核発病リスクとして知られており、7例(50%)を占めていました。喀痰塗沫抗酸菌検査は、陰性2例、±3例、1+3例、2+1例、3+2例、未回答3例であり、排菌している結核症例は6例(42.8%)でした。結核診断までの日数は入院1日が最も多く4例、3日が3例、7日が1例、12日が1例、24日が1例、30日が1例、310日が1例、未回答2例でした。結核の確定診断として、抗酸菌塗抹検査に3日間連続痰を用いることが推奨されています。3日以内に診断された事例は7例(50%)であり、入院早期に診断されています。紹介元の施設での発症が疑われますが、今回は診断までの日数の調査を行い、入院後発病までの日数は調査していないため、今後の課題です。結核発病リスクスクリーニングの実施として、①入院審査時の胸部X線検査は100施設(46%)、②胸部X線検査を行う場合、結核陰影の有無の確認は148施設(74%)、③結核の治療歴や接触歴の問診は93施設(43%)、④2週間以上続く咳や痰がある場合の胸部X線検査は157施設(74%)、⑤2週間以上続く咳や痰がある場合の喀痰塗抹抗酸菌検査は169施設(79%)、⑥結核既往歴や胸部X線で既往所見がある場合、結核発病リスクを念頭にした診察は186施設(86%)、⑦免疫抑制状態にある患者の結核発病リスクを念頭に置いた診察は143施設(66%)、⑧肺癌患者は結核発病リスクを考慮した診察は103施設(48%)実施していました。2週間以上続く咳や痰がある場合の胸部X線検査と喀痰抗酸菌検査は、結核院内(施設内)感染対策の手引き2)で患者の早期発見のために推奨されており、検査を定着させることが必要と考えます。
 会員の皆様には結核アンケート調査にご協力いただき、感謝申し上げます。日本緩和医療学会の会員の皆様の安全・感染対策の普及の一助としてご活用いただければと思います。

参考文献
1)医療現場における結核対策の盲点
結核院内感染に関するアンケート調査
第21回日本環境感染学会学術集会2006.2.24
http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~ict/ict/inf_practice/inf_ict/houkoku.pdf
2)研究代表者 加藤 誠也
結核院内(施設内)感染対策の手引き 平成26年版 厚生労働省インフルエンザ等新興再興感染症研究事業「結核の革新的な診断・治療及び対策の強化に関する研究」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000046630.pdf

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