line
Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.82
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2019  82
よもやま話
とちぎCST(コミュニケーション技術研修会)を開催しました
栃木県立がんセンター 放射線治療科
井上 浩一

 2017年10月と2018年12月の2回にわたり個別開催としてコミュニケーション技術研修会「とちぎCST」を開催した。コミュニケーション技術研修会(CST)とはがん診療に従事する医師・歯科医師を対象とした医療面接などでのコミュニケーションに関する技術を習得する内容の研修会で、現在は一般社団法人日本サイコオンコロジー学会が開催しており、ロールプレイを中心としたプログラム構成が規定されている。近年は医療機関が主催する個別開催が増えつつある。
 「とちぎCST」では2回ともそれぞれ受講者を最大8名までとし、ファシリテーター6名と模擬患者2名を確保した。ファシリテーター6名のうちロールプレイを担当するのが最大4名で、会場管理担当と事務局もファシリテーターの資格を保有する人員で構成した。ファシリテーターは全員が栃木県に関係があり、かつ緩和ケア研修会のファシリテーターや同研修会に関連する会議などで顔を合わせる頻度が多く、普段からさまざまな業務で連携している。
 研修会会場は当院の入退院センター内の相談室を使用した。この相談室は診察室のレイアウトになった部屋5室がならぶように配置されている。このため診察室のリアリティを保つことができ、スタッフ動線の利便性がよく、さらに週末は人の通行がなく研修会に専念できる静かな環境が得られる。これらの点などを考慮し、総合的に判断し研修会場を選定した。
 受講者は2回の開催とも当初は栃木県内から募集し、定員に満たない場合に全国公募に切り替えることとして計画した。全国公募を行っても応募者が2017年は3名で2018年が2名であった。2回とも定員8名に満たなかったため開催を継続することが妥当なのかの葛藤があった。しかし、いざ開催してみると2回とも無事に全日程を進めることができた。
 「とちぎCST」には大きな魅力がある。そのひとつがきめ細かなファシリテートを心がけている点である。ファシリテーターおよび模擬患者からなる関係スタッフ全員による議論を重要視している。研修会の開始前と終了後のスタッフミーティングだけでなく必要に応じて研修会の休憩時間にもスタッフが一同に会するブリーフィングを実施し、研修の方向性についての意思統一を常に図っていくことで、より充実した研修になるよう配慮している。
 もうひとつの魅力は修了者とファシリテーターによる地域内での業務上のネットワーク形成である。2日間の研修を充実させるために受講者全員およびファシリテーター全員で関係性を構築することが必要であり、とりわけこの点を重視している。受講者の多くが栃木県内および近県で勤務していることから、顔の見える関係を構築することで地域内での診療においてお互いに紹介したり相談したりすることがよりスムーズになる点でも研修会が役立つのではないかと考えている。研修会開催事業を継続していくことで地域内ネットワーク形成をさらに拡大させていくことができるのではないかと大きな期待を寄せている。
 「とちぎCST」の個別開催にはいくつか課題がある。そのうち最大の課題が受講者をどのように集めるか、開催情報をいかに提供するかである。メールおよびメーリングリストを使用した開催情報の発信、ファシリテーター全員による身近な医師・歯科医師に対する個別の受講の呼びかけ、および県内各施設の緩和ケア研修会などでの開催情報の提供に注力したが、われわれ医療機関の医師自身が県内の医師・歯科医師の多くに広く情報を届ける点では限界があるとの印象がある。その他の課題としては、受講者定員が少人数であるためキャンセルが出た場合の影響が大きいことや、がん診療以外の内容に対応することが現実的に困難であることなどが挙げられる。
 研修会のわずか2日間で受講者全員がめざましく成長した。本研修会は受講者自身の潜在能力を引き出すことに大きく資する研修会であると実感できた。前述の課題が残るが、このような研修の場を継続的に提供していくことの重要性をあらためて認識した。

Close