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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.82
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2019  82
学会印象記
第16回日本臨床腫瘍学会学術集会に参加して
滋賀県立総合病院
東出 千鶴
吉田 智美

 第16回日本臨床腫瘍学会学術集会は2018年7月19日〜21日に神戸で行われました。今回のテーマは「Beyond Borders 〜Nation Organ Profession」です。あらゆるボーダーを超えて、がん医療が前進することを願われています。様々なテーマについて発表がありましたが、私が興味をもって参加したセッションは、ゲノム医療、がんサバイバー、がん患者の就労支援、免疫チェックポイント阻害薬、抗がん薬曝露対策です。特に今回の学会で学びたいと思っていたのは、ゲノム医療です。乳がんの治療薬として2018年7月2日リムパーザRが承認されました。リムパーザRは、BRCA遺伝子変異によってDNA損傷応答(DDR)経路に異常をきたしたがん細胞に特異的に作用し、がん細胞死を誘導する薬剤です。つまりリムパーザRを治療薬として使用するためにはBRCAに関する遺伝子学的検査が必要になります。その検査結果で必然的に患者さんがご自分の遺伝子を知ることになり、変異がある場合はリムパーザRの適応となるが、同時に遺伝性腫瘍の診断となります。患者さんの親や子供、兄弟姉妹にもBRCA遺伝子変異である可能性がでてきます。「がん」であることに加えて、家族へどのように、この事実を伝えて対応すればよいのか、という悩みが増えることになるのです。遺伝子治療は、患者さんのがんの性質を知り、効果的な治療を選択できる可能性が拡大しますが、生殖系細胞変異である家族性腫瘍に対する不安も生じます。遺伝子タイプがわかっても、保険適応外の薬剤の可能性もあるため、それを使用するためには金銭的な負担も大きくなります。看護師として遺伝子治療を理解し、適切な情報を伝えていかなければいけないと実感しました。
 抗がん薬の曝露対策については、薬剤師、看護師、医師からの発表があり、各施設の動向を知ることができました。様々な病院が全ての抗がん薬に閉鎖式システムの導入を進められていて、当院がまだまだ遅れていることを実感しました。曝露対策の推進はチームで取り組み協働することでコストや必要性を訴えやすくなると学ぶことができました。抗がん薬曝露対策ガイドラインも2019年に更新される予定ですが、ある医師から「エビデンスがないのであれば推奨をしてはいけない。ガイドラインの性質上、ガイドラインの言葉の威力を理解して慎重に伝えてほしい」と意見がありました。抗がん薬の危険性を伝えて、医療者が安心して抗がん薬投与を行うことは大切なことです。しかし、「ガイドラインが正義」と、安易に過信せず、自分自身がエビデンスレベルをしっかり見定めて、抗がん薬の投与を安全に実施できるようにしたいと思いました。
 学術集会は新たな知見や刺激の宝庫です。いろいろな情報を持ち帰り、職場に還元し、一緒に働く仲間ともに、がん看護の意識を高めていけるよう頑張りたいと思います。

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