line
Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.82
日本緩和医療学会ニューズレター
Feb 2019  82
Journal Club
病院・在宅医療者協働の緩和ケアと
患者・家族ペアへの心理介入による介護者の不安・抑うつに対する効果:
‘Domus’ 無作為化比較試験
名古屋大学大学院医学系研究科 看護学専攻基礎・臨床看護学講座
佐藤 一樹

Mulick A, Walker J, Puntis S, Burke K, Symeonides S, Gourley C, Wanat M, Frost C, Sharpe M. Does depression treatment improve the survival of depressed patients with cancer? A long-term follow-up of participants in the SMaRT Oncology-2 and 3 trials. Lancet Psychiatry. 2018 Apr;5(4):321-326. doi: 10.1016/S2215-0366(18)30061-0. Epub 2018 Mar 12.


【目的】
 専門的緩和ケアの介入試験で家族介護者(特に死別後の)の不安・抑うつに対する介入効果を示せなかった先行研究がいくつかある。本研究は、専門的緩和ケアと心理療法を組み合わせた介入による家族介護者の不安・抑うつに対する効果を無作為化比較試験により検証した。
【方法】
 デンマークの大学病院1施設の腫瘍科で抗癌治療の限られる治癒不能がん患者とその家族介護者を対象に介入群と通常ケア群に1:1で無作為割り付けし、無作為化比較試験を行った。介入群は、在宅緩和ケアへの移行支援(多職種カンファレンス、病院の緩和ケア医療者と在宅医療者の継続アセスメント)と患者・家族介護者ペアへの心理療法(ニード・アセスメントとケアの月1回のセッション、死別後の2回の家族介護者対象セッション)の提供を受けた。家族介護者の不安・抑うつは割り付け後6か月までと死別後2週〜19か月にSymptom Checklist-92により測定した。
【結果】
 258組の患者・家族介護者ペアが研究に参加し、介入群に139組・通常ケア群に119組が割り付けられ、研究の観察期間内にそれぞれ105組・89組の患者が死亡した。心理介入を死別前では平均4回、死別後では平均0.4回受けた。家族介護者の不安では、全期間全体(estimated difference=-0.12 [95%信頼区間, -0.22, -0.01]、p=0.027)で有意に介入効果を認めた。家族介護者の抑うつでは、介入開始後8週(-0.17 [-0.33, -0.02], p=0.031)、6か月(-0.27 [-0.49, -0.05], p=0.017)、死別後2週(-0.28 [-0.52, -0.03], p=0.030)、2か月(-0.24 [-0.48, -0.01], p=0.045)で有意に介入効果を認めた。
【結論】
 本研究は専門的緩和ケアと患者・家族介護者ペアへの心理介入による家族介護者の死別前後の不安・抑うつの有意な介入効果を示した初めての無作為化比較試験である。
【コメント】
 終末期患者の家族は精神疾患の短期・長期のリスクを有しているが、十分な支援を受けられていない。本試験は長期間に渡る強い介入であり家族の不安・抑うつの有意な改善を死別前後ともに示すことができた一方で、脱落が多かったことが大きな限界である。
 また、結果として示されている家族の不安と抑うつの経時推移の図も興味深い。抑うつは死別後2週〜2か月がピークで1年かけて軽減していくことは先行研究と同様の推移である。また、不安は抑うつより早期に(死別前から)増悪し軽減すること、不安は介入により死別前後も増悪せず経過できること、なども読み取れる。ただし、上述の通り脱落が多いため図の解釈は参考程度に留める必要はある。

Close