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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.81
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2018  81
よもやま話
川崎医科大学附属病院における転移性脊椎腫瘍のリエゾン治療チーム
−4年間の活動報告−

釋舍 竜司1)〔文責〕、余田 栄作1)、中西 一夫2)、神谷 伸彦1)、河田 裕二郎1)
山本 亮3)、山本 裕4)、最相 晋輔5)、福田 裕次郎6)、西江 宏行7)、岡脇 誠8)
二宮 洋子9)、田中 ゆう子10)、寺本 里美11)、大石 昌美11)、平松 貴子11)
犬伏 正幸12)、宮地 禎幸13)、平塚 純一1)

 1)川崎医科大学 放射線腫瘍学、2)川崎医科大学 脊椎・災害整形外科、
 3)川崎医科大学 放射線診断学、4)川崎医科大学 乳腺甲状腺外科学、
 5)川崎医科大学 呼吸器外科学、6)川崎医科大学 耳鼻咽喉科学、
 7)川崎医科大学 麻酔・集中治療医学2教室、
 8)川崎医科大学 臨床腫瘍学(緩和ケアチーム)、
 9)川崎医科大学附属病院 薬剤部、
10)川崎医科大学附属病院 患者診療支援センター 地域医療連携室、
11)川崎医科大学附属病院 看護部(緩和ケアチーム)、
12)川崎医科大学 放射線核医学、13)川崎医科大学 泌尿器科学

 リエゾンとは「連絡係」、「連絡窓口」、「つなぎ」と訳される仏語であり、リエゾンモデル診療とは精神科医が患者全員に関わるという構造のもとで、問題行動の予防、早期発見の対応などを試みる治療体系である。近年、がん緩和医療にもリエゾン治療の考え方が導入されるようになり、複数の医師や部門が連携して行う集学的で多職種専門チームが診療にあたり、がん患者の心と体の両面から個別化した治療方針にすすんでいる。転移性骨腫瘍の治療においても、従来は原発臓器別の主科にマネージメントが委ねられていたが、専門外である脊椎転移の診断や治療方針の決定は容易ではなく、専門医への紹介に時間を要し、治療のタイミングを遅らせる可能性があり、その結果、不幸にしてSkeletal Related Events:SREを生じてしまい、ADLを大きく下げるとともに、以後の抗がん治療をも困難になってしまう症例を散見する。
 そこで川崎医科大学附属病院では、SREを未然に防ぐべく、転移性脊椎腫瘍に対するリエゾン治療チームを2013年の秋に発足し、2013年末に活動を開始した。昨年末で4年をむかえ、登録患者数は600人を超えることができたので、今回、私たちの治療方針やその内容、成果を報告する。

 まず、川崎医科大学附属病院の「転移性脊髄腫瘍に対するリエゾン治療方針」について記す。
【目的】
 骨転移によるSREが発生すると、患者のADL/QOLは著しく低下する。特に脊椎転移で一旦麻痺が発生してからでは、治療を行っても改善は乏しく、早期発見、早期治療が重要となってくる。骨転移判明時より適切に経過観察もしくは治療を行えば、麻痺は未然に予防できる可能性がある。そのためにはチーム医療が必要であり、ここにリエゾン治療指針(本指針)を策定する。本指針は脊椎転移に限ってのものであり、今後その他の骨転移においても行われることを期待する。
【リエゾン治療チーム】
 川崎医科大学附属病院がんセンター(以下がんセンター)内にチームを置き、脊椎転移判明時から体系的に集学的治療を行う。チームメンバーは泌尿器科、乳腺甲状腺外科、放射線科(画像診断)、放射線腫瘍科、臨床腫瘍科、脊椎外科、看護部から構成され、窓口を脊椎外科担当者もしくは整形外科医局とする。
【運用】
 図1.運用流れ図を参照。

ア)チームへの依頼
主治医からの依頼もしくは放射線科医師の読影(computed tomography:CTもしくはmagnetic resonance imaging:MRI)で脊椎に転移巣が新たに見つかった時点で登録とする。放射線科画像診断より定期的に新規脊椎転移患者のリストを脊椎外科医師に渡してもらい、チェックし、登録を行う。登録は、転移性脊椎腫瘍管理ワークシート(表1.参照)に記録する。

イ)がん腫の指定
当初はすべてのがん腫をチェックすることは困難にて、比較的予後の良い前立腺がん、乳がん、甲状腺がんの3つのがん腫に絞ってリエゾン治療を行う。他のがん腫でも主治医よりの依頼があれば検討を行う。ただし、今後、本治療が発展していけば対象とするがん種は増えていくものとする。

ウ)カンファレンス
毎月1回、その月にワークシートに登録された患者でSpinal Instability Neoplastic Score: SINSが7点以上の切迫不安定の患者についてカンファレンスを行い、SREリスク評価を行う(図2.当院の治療選択基準を参照)。カンファレンスは、リエゾンチームメンバーで行い、次回判定日も決定する。チームでの回診は原則行わない。

エ)主治医への還元
カンファレンスの結果を主治医にチームよりカルテ記載もしくは電話で連絡する。緊急性がある場合には直接電話で連絡する。SRE発生高リスク患者においては整形外科医が診察を行う。SRE発生低リスク患者については、診療を行わず定期的な画像チェックのみを行う。必要に応じて手術や放射線治療に移るが、その際に主治医は、原発がん種の担当科医師とする。

オ)次回判定日
進行性のがん種は1カ月後に判定を行い、緩徐進行性のがん種は3カ月後もしくは間隔をあけて再判定を行う。再判定はCTの矢状断、必要に応じてMRI検査で判定する。前立腺がんでは、骨シンチで新たな脊椎への転移が見つかった場合にはCTの矢状断を撮影する。

カ)安全対策システム
今後、入院患者ではリハビリテーション科医師・看護師・理学療法士による転倒予防SRE発生予防のために患者指導を行う予定である。

 附則 本診療指針は平成26年2月1日より施行する。


図1

図2

表1

 当初は、前立腺がん、乳がん、甲状腺がんの3つのがん種の脊椎転移症例検討からスタートしたが、現在は骨転移を起こすほぼ全てのがん種を対象とし、それに伴いメンバーの構成も当初の泌尿器科、乳腺甲状腺外科、放射線診断科、放射線腫瘍科、臨床腫瘍科、整形外科、看護部に加え、現在は、呼吸器外科、麻酔科、耳鼻咽喉科、放射線核医学と薬剤部が参加し、さらにチームの輪が拡大したので、最近の活動内容の詳細を追記する。

1)各科・各部門の役割
脊椎外科医は、毎月SREのリスクの高い症例を選出し、外科的治療戦略やリエゾン治療チームの統括を行う。放射線診断医は、脊椎転移の診断を各画像モダリティー(2017年7月よりPET-CTも含む)で施行し、放射線腫瘍医と核医学医は、外照射や内用療法の適応、至適線量、照射範囲を決定する。緩和医療チームは、主に臨床腫瘍科と看護部が中心となり疼痛コントロールの評価、患者・家族の心理状態を把握し、それをリエゾンカンファレンスへ情報提供する。麻酔科医は神経ブロックなどの依頼を受ける。薬剤部は、抗がん剤、骨修飾薬、分子標的薬等の投与法・併用治療の是非について情報提供を行う。看護部は、患者の全身状態、患者・家族への病状説明とその理解度の客観的評価の情報提供を行う。地域医療連携室は、院内外の広報や該当科主治医の召喚を主に行う。

2)カンファレンスの準備
主に放射線診断医が毎月リストアップした脊椎転移例の中から、脊椎外科医がSRE発生のリスクが高い症例(SINSが7点以上)あるいは、カンファレンスの開催前に、すでに緊急で治療が行われた症例を含め、月に約10-15症例の検討を行っている。その患者リストは会の数日前に、構成メンバーに院内便で匿名化し配布される。

 リエゾンチーム運用から4年が経過し、当初の目的とした「SREを未然に阻止する。」を実践している。その結果、転移性脊椎患者の総数は年々増加しているにも関わらず、院内リエゾン登録患者のSREに対する緊急緩和治療は、減少傾向を示し(図3.参照)、さらに院内の認知度は徐々に上昇した。これらの成果は、優れた脊椎外科医のナビゲーションと構成メンバー全員の支えあっての事であり、さらにリエゾン治療チームと院内の緩和医療チームとの良好な連携が機能している証とも考える。
 最後に、今後もリエゾン治療チームを5年、10年と継続することが重要である。なぜなら、SREは同じ患者でくり返されるケースが多く、長期的サポート体制が必要となるからである。
 リエゾン治療チームが、これからも川崎医科大学附属病院のがん診療の基盤の1つとして、円滑に機能をしていくことを心より願い、このよもやま話を結びたい。


図3

注釈:リエゾンモデル診療とは、コンサルテーション・リエゾン精神医学の1つである「リエゾンモデルの診療」にならい、転移性脊椎腫瘍患者全員に係り、SREの予防、早期発見とその対応をチームで行うものであり、病的骨折や脊髄神経症状が起こった後に主科からコンサルテーションを受けて併診を開始する従来の診療形態ではない。

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