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Japanese Society for Palliative Medicine
News Letter No.81
日本緩和医療学会ニューズレター
Nov 2018  81
Journal Club
欧州臨床腫瘍学会における成人がん患者のせん妄ガイドライン
横浜市立大学 学術院医学群医学部看護学科
成人看護領域
菅野 雄介

Bush SH, Lawlor PG, Ryan K, Centeno C, Lucchesi M, Kanji S, Siddiqi N, Morandi A, Davis DHJ, Laurent M, Schofield N, Barallat E, Ripamonti CI; ESMO Guidelines Committee. Delirium in adult cancer patients: ESMO Clinical Practice Guidelines. Ann Oncol. 2018 Oct 1;29(Supplement_4):iv143-iv165. doi: 10.1093/annonc/mdy147.


 本論文は、欧州臨床腫瘍学会のワーキンググループにより作成された、成人がん患者のせん妄に対するガイドラインである。Cochrane, Ovid Medline, PubMed, Embase, PsycINFO and SCOPUSなどのデータベースを用いて、2000年から2017年に発表された、18歳以上、病院(集中治療室は除く)、緩和ケア病棟、ホスピス、地域で療養するがん患者を対象とした論文をレビューし、ワーキンググループで検討し、エビデンスに基づく推奨事項をまとめた。推奨事項のうち、臨床的有用性が期待でき強く推奨するもの(A)、臨床的有用性に限度はあるものの効果が期待でき一般的に推奨するもの(B)について、以下に示す。
 [可逆性せん妄のマネジメント]では、初期アセスメントにおいて誘発因子と増悪因子を同定すること(A)、オピオイド誘発性神経毒性の兆候がみられる場合はオピオイドローテーション(またはスイッチング)を適切にすること(B)、ビスフォスフォネート製剤は高カルシウム血症のコントロールに使用されるがせん妄を発症するかもしれないこと(A)、[薬物療法によるせん妄の予防と治療]では、高齢がん患者に対し薬剤の漸減または中止(deprescribing; Leblanc TW, et al. Lancet Oncol 2015)すること(B)、オピオイド鎮痛薬に関連するせん妄に対しフェンタニルやメサドンにローテーション(またはスイッチング)すること(B)、[せん妄教育]では、全てのがん患者がせん妄を発症すると限らないが、患者の近親者や家族に予めせん妄の情報を提供すること、特に患者の病状が進行期にある時に行うこと(A)、せん妄の発症がみられる場合、せん妄の書面情報は訓練された医療者が家族に対し教育的支持的な支援を行う上で補助となる(A)、医療者間でのせん妄教育は、医療チームによるせん妄の認識、評価、マネジメントを改善するための核となる介入である(A)が挙げられた。
【コメント】
 欧州臨床腫瘍学会が示した成人がん患者のせん妄に対するガイドラインの特徴として、可逆性のせん妄に焦点を当てており、せん妄のリスクや発症を早期に発見し初期対応(予防や治療)に努めることが重要である。また、臨床でせん妄と認知症の鑑別が付かず治療戦略が立てられないことがあるだろう。NICE(The National Institute for Health and Care Excellence)の認知症ガイドラインでは、判断に迷った場合はせん妄ケアを優先することが推奨されており(Pink J, et al. BMJ 2018)、せん妄と認知症、合わせてガイドラインを確認することをお勧めする。
 今回紹介したAnn Oncol(Volume 29, Issue Supplement 4)では、せん妄の他に、進行がん患者の便秘、成人がん患者の下痢、成人がん性疼痛などガイドラインが掲載されており、機会があれば参照いただきたい。

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